ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
DeNA大貫晋一、崖っぷちから5連勝。
「空白の3日間」で何があったのか。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byAsami Enomoto
posted2020/08/20 17:30
1994年2月3日生まれの26歳、神奈川県出身。静岡・桐陽高から日体大、新日鐵住金鹿島(現・日本製鉄鹿島)を経て2019年にドラフト3位で入団した。
昨季も「不屈」を感じさせた大貫。
そんな大貫の様子を見ていて思い出したのは昨シーズンのことだ。
6月22日の楽天戦、大貫は1アウトもとれないまま6失点し、マウンドを降りた。その後ベンチにいた大貫の表情が忘れられない。顔色は青く茫然自失とし、心ここにあらずといった表情でゲームを見つめていた。1イニングでマウンドを降りた今季の阪神戦でも、同様の表情をしていた。メンタル的にかなり厳しいことが見て取れる。この状態から巻き返すのは難しいのではないかと思えるほどだった。
だが、大貫は沈むことなく、浮上する。昨季の楽天戦後の登板となった7月4日の阪神戦は、DeNAにとって天敵であるメッセンジャーとの投げ合いだった。容易ではない状況ではあったが大貫は5回、自責点1の熱投で、勝利を飾っている。寸前のところで、踏みとどまった。
不屈――大貫という投手は、温和な表情の裏に、そんな言葉を想起させる人間である。
対左のために習得したカットボール
今季の大貫の好投の要因のひとつは前述した新たにマスターしたカットボールだ。とくに左打者に対して鋭く食い込むカットは有効であり他の変化球との相乗効果で凡打を重ねるケースが多く見られる。このカットはなぜ取得したのか。聞けば、とくに誰に言われるわけではなく、自己分析から必要だと感じマスターするに至ったのだという。
大貫は数カ月前を振り返る。
「昨年、ファームに落ちたとき自分のデータを見直すと左打者に打たれているケース(被打率.376)が非常に多かったんです。右打者に対しては食い込むツーシームがあり、あまり打たれてはいないのですが、考えてみれば左打者に対してそういったボールがない。スライダーはあるにせよ、あまり左打者に有効だと思う場面がなく、そこはスピードなのか軌道なのかわからないのですが、より真っすぐに近いスピードで、沈みながら横に曲がるボールがベストではないかと考えたんです」
変化やレベルアップを図るためにもっとも重要なのは、誰かに言われることではなく自分の意思そのものだ。大貫はファームの大家友和ピッチングコーチにカットの握りや感覚を教えてもらい、シーズンが終わると実戦の場を求め、オーストラリアへと旅立った。DeNAと提携関係にあるキャンベラ・キャバルリーで大貫は2カ月半もの間、現地でホームステイをしながら強振をしてくるパワーのあるオージーを相手にカットの精度を高めていった。
ちなみに大貫にオーストラリア行きを勧めたのは、前年に同地へ派遣され一皮むけた国吉佑樹だった。行くか迷っていたとき「いかない理由がないぐらい、いい経験ができたから行くべきだよ」と背中を押してくれた。