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DeNA大貫晋一、崖っぷちから5連勝。
「空白の3日間」で何があったのか。
posted2020/08/20 17:30
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Asami Enomoto
いつも心のなかにあるのは“危機感”だ。
今シーズンここまで先発として5勝を挙げ、防御率1.86(8月17日現在)と好投している横浜DeNAベイスターズの大貫晋一は、表情を若干固くしつつ丁寧に言葉を選び口を開いた。
「1試合1試合、いつもラストチャンスだと思って投げています。その危機感がいい方向に結果として出ているのではないかと」
出だしは最悪だった。今季初登板となった7月2日の巨人戦は4回を投げ2失点で降板、さらに10日の阪神戦では3失点を喫しわずか1イニングで降板を命じられている。失いつつある信頼。危機感が大貫の心を支配する。
それから中3日となる14日の中日戦、先発ローテーションが安定していないこともあり、前回30球しか投げていない大貫にチャンスが訪れた。
条件としては非常に厳しい状況であり、また周囲からの期待も決して高いものではなかった。ここで結果を出さなければ、失礼ながら、もうあとはないと考えていましたか? と問うと、大貫は言葉少なに、実感を込め返事をした。
「もちろん、そうです」
イメージがなかった「手先からの始動」。
窮地の登板で大貫は目の覚めるような投球を披露した。ストレートで押し込み、新球であるカットボールなど変化球を多彩に投げ分けゴロを量産。ふたを開けてみれば8回被安打3で自責点1、89球でマウンドをあとにする驚きの投球内容だった。
空白の中3日。ここまで状態が劇的に変化した要因は、木塚敦志ピッチングコーチのアドバイスにあった。これまでの投球を見直した上で、手先から始動することを提案された。あとがなくドラスティックな変化を求めた大貫はそれを受け入れた。結果、フォームのバランスはよくなり、ボールは勢いを増した。
「手先からの始動は、僕のなかではまったく持っていなかったイメージでした。試してみると馴染む感じがありました」
その後、大貫は好投をつづけ破竹の5連勝。一旦は見放したとおぼしきラミレス監督の信頼を実力で取り戻した。