ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
鈴木みのるが語る無観客ヒール論。
「前提をお前ら、忘れてねえか?」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGetty Images
posted2020/08/14 11:30
7月31日、永田裕志に強烈な張り手を見舞う鈴木みのる。会場から大きなどよめきが起こった。
永田との一騎打ちで聞こえた本物の歓声。
7月31日、新日本プロレス後楽園ホールのメインイベントで行われた、鈴木みのると永田裕志の一騎打ちは、まさに鈴木がインタビューで語ったことを体現するような試合となった。
同い年で高校レスリング部時代からしのぎを削ってきた二人の闘いは、数えきれぬほどのエルボー、張り手、キックを叩き込み合う、壮絶な闘いとなり、「一歩でも引いたら負け」そんな両者の意地の張り合いという名の勝負が延々と展開された。
強烈な打撃の“生音”は、大声での応援が禁止された館内に響き渡り、その都度、ため息のような声が観客の口から漏れ始める。そして張り手とエルボーの猛ラッシュで永田がついに崩れ落ちると、観客から大きなどよめきが起こった。これこそが、鈴木の言う「本物の歓声」だ。
最後は、ゴッチ式パイルドライバーを決めて、35年越しの因縁に決着をつけた鈴木。歓声が制限されようと、観客を満足させるすごい試合をすることはできる。そんな強烈なプライドを見せつけられた思いだ。