野球善哉BACK NUMBER
3年生の起用か、2年生の経験か。
天理と広島新庄の別れた判断。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2020/08/11 16:00
広島新庄は、多くの2年生を起用して戦い、勝利で夏を締めくくった。
野球ができなかったのは2年生も一緒。
新型コロナウイルスの感染拡大による自粛期間で、野球から離れて苦しんだのは3年生だけではない。それを目の当たりにしているからこそ、今大会で指揮をとる監督の多くが起用の悩みを抱えているのだろう。今までであれば迷わなかったケースでも、今年は別のファクターが確かに存在している。
しかし、2年生の時に実戦を経験したことで鮮やかな成長曲線を描いた選手が多くいることもまた事実だ。
2年の春の選抜はベンチ外で、夏からレギュラーを獲得した浅村栄斗(楽天)は、その年こそ甲子園出場はならなかったが、その経験を翌夏の全国制覇の糧にしている。ロッテのレギュラーを務める中村奨吾も天理高校2年春はベンチ外。夏からレギュラーを獲得して、その後3度の甲子園出場を果たした。
投手でも、2005年夏の優勝マウンドに立った田中将大(ヤンキース)は、2年生では史上最速となる150キロを投げこみ勝利の雄叫びをあげた。その後の活躍は記すまでもない。
3年生のための大会と受け止めた天理の2年生たちはたしかに殊勝だった。だが、2年生にとっても野球ができない時間は苦しかったということは忘れてはいけないと思う。