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豪GI制覇への足掛かりとなった、
メールドグラースの小倉記念。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/08/14 07:00
コーフィールドCを勝利した直後のメールドグラース。続くメルボルンCの後屈腱炎を発症、現在は長期療養中。
「これならきっと好勝負が」
追い切った後、彼は言った。
「日本で乗った時と変わらない状態にあると感じました。これならきっと好勝負が出来ると思います」
輸送がうまくいき、状態は良いとなれば、課題は距離の克服だった。小倉記念を含めた3連勝中の重賞はいずれも2000メートル戦。一方、コーフィールドCは400メートル延びる2400メートル戦。しかし、指揮官には当然、勝算があるからこそ海外遠征に踏み切ったという想いがあった。
「力んで走る馬ではないですからね。折り合いがついて、しまいがしっかりしたタイプなので距離が延びる分にはこなしてくれると思います」
レース当日は雨が降ったり止んだりを繰り返した。一時は豪雨と言えるほどの降りになったがレース前には上がった。
しかし、各馬がゲートインをしている最中に、再びの降雨。そんな中、スタートが切られた。メールドグラースは外枠が響いたか後方2番手という厳しい位置。しかし、後にレーン騎手は戦略的な位置取りだったと口にする。
「200メートルほど行ったところで流れが速くなりました。この流れなら下手に前を追いかけるより、差す競馬に徹した方が得策だと思い、意識的に下げました」
「完勝と言える競馬で驚いて」
これがズバリとハマった。重賞3連勝中の日本からの挑戦者はバンクのある最終コーナーを外から好手応えでぐんぐんと進出。直線に向くと内にササりながらも豪快に先行勢を呑み込んで、抜け出した。
「ここで8着以内に来るようならメルボルンC挑戦も考えていたのですが、それどころか完勝と言える競馬だったので驚いています」
清水調教師は満面の笑みでそう語り、実際、この後、メルボルンC(GI)への正式な出走を表明した。