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全米プロ王者はコリン・モリカワ。
飛距離は100位以下、武器は頭脳。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2020/08/11 11:30
コリン・モリカワは名前からわかる通り日系アメリカ人で、細身な見た目の通りの技巧系である。
平均飛距離は米ツアーで100位以下。
モリカワは飛距離が出ず、ドライバーの平均飛距離は296ヤード前後しかない。米ツアーでの飛距離ランキングは110位前後。だが、アイアンの精度とパットの上手さは群を抜いており、それが自分の強みであることをモリカワはしっかり認識している。そして、自分の戦い方で戦うことを彼は楽しんでいる。
そういう認識を促し、そういう楽しみ方を教えたのは、モリカワがジュニア時代から師事しているメンタルコーチ、リック・セッシンガスだ。
統計を活用し、「脳で勝て」と指導するメンタルコーチの教えは、モリカワの頭脳に幼いころからインプットされている。
だから、躓いたり、傷ついたりしたときは、速やかに気持ちを切り替える。リフレッシュされた脳は新たな発見をもたらし、新たなチャンスをもたらし、さらなる挑戦を可能にする。
再開初戦で敗れたときも、2週後に初めて予選落ちを喫したときも、そうやってモリカワは、あっという間に立ち直った。
チップインバーディーの運も味方に。
メンタルコーチの指導の下で精神のコントロール術を覚え、そのメンタリティとアイアンとパットで飛距離不足を補う。そんなモリカワならではの戦い方は、全米プロで大きく開花し、そして実った。
パワーヒッターたちがひしめき、一時は最大6人が首位に並んで大混戦となった最終日、モリカワは9番で絶好のバーディーチャンスを逃し、険しい表情を見せた。
だが、すぐさま10番(パー5)でバーディーを奪い、通算10アンダーとして首位に並んだ。
しかし14番でピンチに陥った。フェアウェイからの第2打を失敗し、ボールはグリーン手前に止まってしまった。が、ミスを悔いるのではなく、すぐさま気を取り直して打った第3打は、そのままカップに吸い込まれ、チップイン・バーディーとなって通算11アンダーへ。願ってもない幸運だった。