球道雑記BACK NUMBER
ロッテ益田直也の進化とシンカー。
井口監督の助言、記録よりも優勝。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2020/08/02 11:30
選手会長としてチームを牽引する益田。ここまで16試合に登板し、リーグトップとなる10セーブを記録している(8月1日時点)
ガムシャラに投げるのではなく。
「心境の変化はあまりないですけど、マウンドでは相手を見て考えて投げるようにはなりました」
チーム内でも身体能力で1、2を争うほどのポテンシャルを持つ益田。つい数年前までは良くも悪くもポテンシャルの高さを活かし、ボールの力で押すタイプのピッチャーだった。それが経験を重ね、失敗も味わったことで少しずつ投球スタイルにも変化が生じた。
「絶対に投げミスをしたくないというタイミングが各打者からアウトを獲るときにあると思うんです。そこで『投げミスしない』『あそこにしっかり投げる』と冷静に考えられている感じが(今年は)あるかもしれないです」
気の強さが持ち味の益田だが、今季の彼を見ていると打たれても、抑えても、表情を変えず、淡々としているのが見て取れる。
益田が続ける。
「甘くなっても良いカウントがあると思うんですけど『ここはしょうがない』ってところと『ここはダメ』ってポイントがあるのでそこは意識して投げています。ガムシャラに全力で投げるって感じは、今年はないかもしれないです」
西武・栗山に投じた全球シンカー。
相手を観察しつつ、技術的にも精神的にも平常心を崩さずに自身のフォームでいかに投げられるか。それがこの2~3年で完成形に近づいた。
「2017年くらいから少しずつ出来るようになって、'18年はさらに出来るようになった。今年はそれが大部分(の場面)で出来るようになった感じがします。そのためにはもちろん経験が必要でした。頭でわかっていても、経験がないと実戦では出来ない。どちらも合わさることで出来るようになってきたんじゃないかと思います」
印象的だったのは7月7日の埼玉西武戦。9回に1点を返され、なお1死一、二塁のピンチを迎えた場面。打席には栗山巧が立っていた。
ここで益田は全球シンカーを選んだ。プロの一流打者を相手に一見、ギャンブル的にも思えた配球だったが、これも相手打者の反応と状況を見極めて、最良の答えを導き出した。
益田がこう振り返る。