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693日ぶりの復帰登板で大乱調。
『サンデー・ショウヘイ』は続くか。
posted2020/07/28 15:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
目を疑った。びっくりした。
693日ぶりにメジャーのマウンドで投じた第1球は予想通りの直球だったが、その軌道、球速、腕の振り、投球フォームの躍動感、そのすべてが脳裏に残る大谷翔平のものではなかった。まるで別人だった。
球速は93マイル(約150キロ)。お辞儀するような力ない直球が真ん中低めへと配され判定はストライク。アスレチックスの先頭打者マーカス・セミエンも考え込むような表情で下を向き、一瞬動きを止めた。
快晴のカリフォルニア州オークランド。右肘のトミー・ジョン手術からの記念すべき復帰マウンドで大谷翔平はアウトをひとつも取れずに3安打3四球5失点。わずか30球でマウンドを降り敗戦投手となった。防御率は屈辱の∞(無限大)……。
一言で片づければ、準備不足。
試合後のオンライン会見で大谷は我々の見立てと同様の言葉を発した。
「腕がイマイチ振り切れていなかったなというのは全体的にあるかなと思います」
30球中ストライクは15球だった。直球の最速94.7マイル(約152キロ)は2018年シーズンの最速101.9マイル(約163キロ)を下回ること12キロ、平均でも92.7(約149キロ)と96.7マイル(約156キロ)。その落差は7キロに及んだ。
直球のスピードが落ちれば変化球の球速も下がるのは常だ。切れを欠く抜けるような球が多く、スプリットに関してはわずか2球しか投げられなかった。そして、奪った空振りはひとつもなかった。
「メカニックもそうですけど、ゲーム感というか、今日はただ投げていると言う感覚に近かった」
一言で片付けるならば、準備不足。メジャーのマウンドで投げる準備が整う前に上がってしまった復帰登板。これは間違いない事実であろう。では、首脳陣は大谷の現在地を把握していなかったのであろうか。結論から言えば、そんなことがあるわけがない。