プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人・増田大輝、“神走塁”の背景。
鳶職と「観察、準備、決断、実行」。
posted2020/07/24 11:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
「いやいや、もう価値からいったら同格だね」
7月19日のDeNA戦の勝利監督インタビュー。主砲・岡本和真内野手の決勝2ランで6連勝を決めた巨人・原辰徳監督が、その岡本の2ランと「同格」と称賛したのが、直前に見せた増田大輝内野手の走塁だった。
1点を追う9回2死二塁。
丸佳浩外野手の放った一、二塁間のゴロをDeNAの柴田竜拓二塁手が横っ飛びで好捕してなんとか外野に抜けるのは阻止する。
しかしそのとき二塁走者の増田は三塁を回り、一気にホームを狙っていた。
気づいた柴田が体勢を立て直して本塁に送球する。タイミング的にはアウトだったが、タッチをかい潜って増田の左手がホームを払うと有隅昭二球審の両手が大きく広がった。
DeNAのアレックス・ラミレス監督からリクエストが出たが判定は変わらず、この土壇場のワンプレーで追いついた直後に飛び出したのが、岡本の一撃だった。
原監督「走塁のカンが物凄くいい」
「もちろん彼の最大の武器は天性のスピードなんだけど、技術的にもスタート、スライディングと走塁のカンが物凄くいい。カンがいいから自分の最大の武器を使って、思い切って走れるよね」
増田への原監督の評価である。
この場面も単にスピードスターとしての俊足だけではない。スタート、スライディングと走塁カンの良さを遺憾なく発揮して、増田が作り出した同点劇だったのである。
「ツーアウト、ツーストライクでしたし、ストライクゾーンに入った瞬間にスタートを切って。(打球が)右方向だったので、とりあえず全力で後藤(孝志)コーチの回しをそのまま。思い切り回していたので、行けると思っていきました」
試合後の本人談だ。ここまではセオリー通り。しかしそのカンの良さが光るのはホームへの滑り込みだった。