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「か弱い自分はイヤだった」
ボクシング元世界女王が選んだ挑戦。

posted2020/07/15 18:00

 
「か弱い自分はイヤだった」ボクシング元世界女王が選んだ挑戦。<Number Web> photograph by Sachiko Hotaka

ミドルキックやヒザ蹴りのフォームも堂に入ったもの。「それでも試合ではまだボクシングに頼ってしまう」

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

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Sachiko Hotaka

 なぜ大きな話題にならなかったのだろうか。昨年11月9日、元WBA女子世界ライトミニマム級王者古川夢乃歌が「山本ユノカ」というリングネームでキックボクシングに転向し、判定で初陣を飾った。

「ボクシングから離れて1年くらいは何もやっていなかったんですけど、いまの職場の元社長から『もう1回、格闘技をやってみたら?』と背中を押されてキックを始めました」

 下地は少しだけあった。ボクサー時代、総合格闘技のジムでボクシングを教えていたことで、総合に近いといわれるキックの距離やタイミングを感覚的に掴んでいたのだ。

「そういう関係でキックを見る機会は結構あったので、『いつか私もやってみたい』とは思っていました」

 山本はWBA世界王座を獲得する前にOPBFフライ級王座も獲得している。にもかかわらず、なぜキックに転向しようと思ったのか。

「本当はどんどん複数階級を制覇しようと思っていたけど、(3階級上げて挑戦した)海外での世界戦で負けてしまい、そこから就職しないと生活できない感じになってしまった」

 世界王者になっても食べていけない現実。山本はジムから遠ざかり、安定した生活を求めた。「勝ち続けていたらやっていたと思いますけど、1回負けてしまったらもうモチベーションが続かなかった」

「キックでも王者になる」

 だが、初めて格闘技から離れた生活に物足りなさを感じ始めた。

「辞めたら太るという話を聞いていたけど、逆にどんどん痩せました。もともと食べる量も少ない方なので、筋肉も落ちる一方でした。か弱い自分はなんだかイヤでしたね」

 キックの練習を始めて1年半、山本は素の明るさを取り戻しつつある。指導するKICK BOXの鴇稔之代表は「キックでも王者になる」と太鼓判を押す。「もともと身体能力は高いうえに体は頑丈。ボクシングの癖を直していけば、細かいことを言わなくても成長するでしょう」

 コロナの影響で試合は2つも流れ、キックの通算戦績は2戦1勝1分。しかしながら3戦目となる7月19日のRISE東京大会でチャンスが訪れた。女子キックのレジェンドである紅絹との1戦が決定したのだ。

「動画をたくさん見て研究します」

 日本女子として初めてボクシングとキック両方の世界王者になるか。

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