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井上尚弥のいとこ、井上浩樹は
なぜオタクボクサーになったのか。
text by
齋藤裕(Number編集部)Yu Saito
photograph byKoki Inoue
posted2020/07/15 11:30
自宅からも伝わるアニメへの愛。最近は恋愛アドベンチャーゲーム『Rewrite』を再びプレーしている。
アウェイのようだった現実の世界が変わっていった。
しかしプロボクサーとなった井上浩樹は自身の見せ方を変えない。トランクスには『ラブライブ!』の楽曲の歌詞「いまが最高!」やガールズバンドをテーマにした『BanG Dream!』に登場するバンド名「ポッピンパーティー」(通称ポピパ)からとった「Poppin」のメッセージを入れ続けた。
観衆のうすら笑いが目に入っても、入場曲はアニソンのまま、堂々とリングまで歩いていった。
「なんでアニメ好きを公言しているかと言ったら、ボクシングに興味のなかったアニメ好きの人にボクシングを知ってもらいたいからなんですよね。逆にボクシングを好きな人にも自分をきっかけにアニメを好きになってほしいんです」
会場にも変化が起き、井上浩樹を見にハッピを着て駆けつける人、サイリウムを振って応援してくれる人も現れた。連勝を重ね結果を残していくうちに、アウェイのようだった現実の世界が変わっていった。
オタクボクサーならではの悩み。
しかしオタクボクサーならではの悩みもあるという。
「見てきた作品を最近、忘れてきているんです。これ面白そうだなと思った作品を見ていて、途中で『あれ? これ見たことあるな』と気づくことがよくある。これは一発殴られるごとに一話飛んでしまっているからじゃないかなと思うんですよ(笑)。それくらいダメージはあるんで」
王者・井上浩樹は7月16日の無観客での日本スーパーライト級防衛戦について、「テレビなどの画面を通して試合は見ていただく形になると思いますが、自分の頑張っている姿を見てもらい、何か苦しい状況を乗り切れる元気を与えられたらと思います」と未知の一戦への意気込みを語る。
気づくと、好きなものについて顔をほころばせながら語っていたその表情は、画面から何が伝えられるか思い描くプロアスリートのそれに変わっていた。