JリーグPRESSBACK NUMBER
トリニータの夏男&エンターテイナー
三平和司、2つの転機と得た妙技とは。
text by
柚野真也Shinya Yuno
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/13 19:00
フラッシュインタビューでの“弾けっぷり”が話題となった三平和司だが、ピッチ内で見せる実力も本物だ。
チーム最年長32歳、夏男の妙技。
例年、気温の上昇と共に調子を上げる夏男は、今季は梅雨明けを待たずに安定したプレーぶりで活躍する。
1月に32歳になり、チーム最年長となった三平は、歳を重ねるごとにプレースタイルを変えてきた。ストライカーからアタッカー、そしてチャンスメーカーとなり、今では前線のオールラウンダーとして自分の居場所を確立した。サッカー選手で30歳を超えれば、円熟の極みだろう。
たとえ全盛期ほどのスピードや運動量がなくとも、試合を読む目が研ぎ澄まされる最強の頃合い。三平は今季、その妙技を手に入れた。
西山GM「熟練工のようなプレー」
三平は試合の中の時間の流れを的確につかみ、「今は相手の時間だけど、自分たちの時間は必ずきて、最終的にはこうなる」という先読みができる。ゴール地点が見通しているというか、勝利を掴むまでのストーリーが描けている。
だから、途中出場であっても、リードされていても、あたふたしない。
西山哲平GMは「ベテランという言い方は失礼だけど、経験のある選手だからこそできることがある。三平も熟練工のようなプレーができるようになった」と話す。あそらく三平には90分という時間だけでなく、34試合のリーグ終盤戦までの流れが読めているのだろう。
今季の目標を聞くと「J1で得点するのは難しい。目標を2桁得点なんて言えない」と答え、「試合に絡めるように頑張るだけ」と控えめだったが、リーグ再開後の活躍を見ると、「試合にさえ出れば結果を出せる」との自信の現れだったのではないかと勘ぐる。味方のためにスペースを空け、パスコースを作る献身的な動きで攻撃の潤滑油となる。
また、誰とでも壁を作らず接する性格と同じように、誰と組んでも相手が気持ちよくプレーできるように空気を読めるのは経験のなせる業だ。