「やっぱり日本人は根性ありますからね」

　一方の内山はソリスからの対戦変更に気持ちが揺らぐことはなかった。

　逆に、余計に気が引き締まったという。

「ソリスは確かに世界的にも名前があったんで、自分の力がどれほどのものか試したいという気持ちはありました。でも流れてしまったものは仕方がない。

　三浦はもう日本に敵がいない状況でしたし、やっぱり日本人は根性ありますからね。僕自身、ここで日本人ボクサーに負けてしまったら意味がないし、世界チャンピオンとして差をつけて勝たなきゃいけないですから」

　気を引き締めなければならない理由はもう1つあった。試合の1カ月前、スパーリングで右拳を痛めてしまったのだ。

　以降、試合当日までスパーはもちろんのこと練習でも右を使わなかった。短い準備期間のなかで、左だけを重点的に磨いてきた。

　右拳に不安を抱えるなか、試合当日のウォーミングアップでミット打ちを解禁する。しかし痛みが走ってしまうことで、右で倒すのは厳しいと覚悟する。

　佐々木修平トレーナーをはじめチーム内山の面々にも「きょうは判定になるだろうな」と伝えている。

時折、痛いのは承知で右ストレートを。

　右拳の不安を三浦、そして横浜光ジム陣営に悟られてはいけない。1ラウンド、時折、痛いのは承知で右ストレートを見舞っているのもそのためだ。

　内山は立ち上がり、警戒度をかなり高めていたという。

「以前スパーリングをやったときよりも随分と力をつけているはずだし、日本タイトルの防衛を重ねて自信もつけている。初っ端からガンガン来るんじゃないかなっていう想定もありました。意外に様子見のスタイルで入ってきたなとは思いましたね。

　僕は大体どの試合も1、2ラウンドの序盤は、まず感覚をつかむというか。（この試合も）三浦の左がどのくらいのパンチの伸びがあるかとか、自分のどのパンチが有効なのか、探っていくのが先でした」

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