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オカダ・カズチカがなぜ古臭い技を!?
“コブラクラッチ”の先のIWGPと猪木。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/07/07 17:00
高橋ヒロムを容赦なくコブラクラッチで締め上げていくオカダ・カズチカ。この古典的な技から、オカダの新技が?
アントニオ猪木がオカダを進化させる!?
オカダの優勝を前提とすると……12日の大阪城ホールではIWGPヘビーとインターコンチネンタルの2つのタイトルが同時にかけられることになるが、オカダが欲しいのは1本のベルトだけ、もう1つのセカンド・タイトルには興味がない
「2つ持っている人がいますが、ボクが目指すものは1つだと思っています」とオカダは言い切る。
この12日の試合でオカダが内藤に勝ったら、インターコンチネンタルは封印という運命に導かれることになる。IWGPの主旨は時代とともに変わったが、IWGPを唯一無二のタイトルと考えるオカダに、私は共感を覚える。
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オカダを変えていくのはコロナばかりではない。
アントニオ猪木という存在がある。
オカダは2月の札幌・北海きたえーる大会で、突然試合直後にリング上で「アントニオ猪木ーーーッ!」と多くの観衆の前で叫んでみせた。これまで2度、アントニオ猪木とは会ったことがあるということだったが、ほとんど接点のないままに、とにかく「猪木に会いたい」と思ったのだという。
そのことを私から猪木に伝えると、「オレをプロレスに呼び戻さないでくれよ」と笑っていた。
だが、ファンの前で猪木の名を叫んだことで、メディアによる取材という縁ではあったが、オカダは猪木と会うことができたわけだ(Number1006号「プロレス名勝負秘話 ベストバウトをぶっ飛ばせ!」にて)。これで、また、オカダの中に新たな変化が起きていることは間違いない。
オカダは猪木に会場に来てもらって「変わった新日本プロレスの試合を生で見てもらいたい」と思っているのである。
77歳になっても猪木は猪木であり続けている。
オカダが、44歳も違う猪木と道場でスパーリングすることは、もうかなわない。タイムスリップでもしない限り、猪木が今のオカダの歳くらいだったころの本当の怖さを知ることはできない、ということだ。オカダの中のプロレスラー猪木は、DVDなどに残っている映像でみた世界だけのものなのだ。
アントニオ猪木という存在を、ひと言で語ることができないのは当然だ。そして、77歳になっても猪木は猪木であり続けており、その影響力は今も健在なのである。