話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
仙台に帰ってきた西村拓真の現在地。
Uターンは意外と難しいが、希望も。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/07/07 11:40
珍しい経緯で帰国した西村拓真だが、仙台にとって頼れる切り札になる可能性を十分に秘めている。
動き出しは絶妙、修正ポイントも確か。
ただ、いくつか今後を期待させるシーンもあった。
前半27分、松下佳貴へのスルーパスは絶妙で、トラップがうまくできていれば1点もののパスだった。動き出しのタイミングも絶妙だ。あとはパスを受けた後の判断さえ整理できれば、シュート数は増えていく。そうなれば早晩、ゴールも生まれるだろう。
動きについて修正する意欲も見えた。試合中、松下らとコミュニケーションを取り、飲水タイムの時にはコーチから指示を受け、動きやポジショニングについて確認をしていたので、次はもっと良くなるはずだ。
時間の経過とともに攻撃の選手が次々と入れ代わっていく中、西村はフルタイムでプレーした。それは、戦術的な側面というよりも木山監督の早くチームと日本のスタイルに慣れるようにという親心と期待の表れでもあったように思える。
試合後、西村は、湘南のベンチに駆け寄り、かつてのチームメイトである大岩一貴と石原直樹に挨拶をしていた。大岩とは、マッチアップし、その壁を打ち破ることができなかった。
また、石原には、仙台時代に背中を見て、学び、刺激を受けた。古巣のエースと対峙し、なんとかいいところを見せたかったはずだが、石原の動きのキレと比較しても西村にはまだコンディションが上がる余地があるように見えた。
仙台の攻撃陣のスタメン争いは激しい。
湘南戦は、日本での復帰戦、元チームメイトとの対戦、リーグ再開の初戦など、西村には意味のある試合だったが、もうひとつ爪痕は残せなかった。
しばらくはスタメンで起用されるだろうが、仙台は攻撃陣が粒揃いだ。湘南戦で決勝ゴールを挙げたジャーメイン良、そしてこの日のスタメンだった長沢駿、さらに交代枠で入った赤崎秀平、アレクサンドレ・ゲデス、山田寛人、負傷離脱中のイサック・クエンカと個性が異なる選手が列を成している。
競争が非常に激しいので、うかうかしているとポジションを奪われてしまう。