話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
仙台に帰ってきた西村拓真の現在地。
Uターンは意外と難しいが、希望も。
posted2020/07/07 11:40
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
「久しぶりの試合でしたけど、落ち着いて勝つゲームが出来てよかった」
試合後、湘南に1-0で勝利した仙台の木山隆之監督は、満足そうな表情でそう語った。ただ勝ったとはいえ、前半3分に1点取った後、湘南に主導権を握られた。そのことを踏まえて、「攻撃の形をもう少し増やせれば」「攻撃についてはもっと追求していかないといけない」と次戦への課題を口にした。
木山監督のその声を西村拓真は、どう聞いていただろうか。
この試合、攻撃面で大きな期待を背負ってスタメンに名を連ねたのが西村だった。
西村は、2015年に仙台に入団。2018年、24試合11ゴールという結果を出して、夏にCSKAモスクワに移籍した。FWとしてシュートの精度を高め、得点を重ねるごとに落ち着いてゴール前でプレーできるようになった。そうして結果を積み重ね、欧州への移籍を勝ち取ったのだ。
スムーズに戻れるかと思ったが。
CSKAモスクワでの1年目は12試合で2ゴールを挙げ、2シーズン目の途中でポルトガルのポルティモネンセに移籍した。2試合出場したところでコロナ禍の影響でリーグ戦が無期限の延期となり、様々な不安を感じて帰国を決断。今年3月22日、仙台に期限付きで移籍したのである。
移籍先が日本のクラブであるし、古巣への復帰ゆえにスムーズに戻れるかと思いきや、それほど甘くはないようだ。
欧州に行けば、選手として求められるもの、クラブのサッカーの質、スタイルも日本とまったく異なる。個人主義の欧州では、「チームのために」は、個人が結果を出すこととイコールだ。
そのために意識はもちろん、フィジカルを強くしたり、プレースタイルを変化させたり、欧州で活躍するためのスタイルにマイナーチェンジしていく。西村も欧州のマインドを実感させられただろうし、その意識とプレーが体に染みついたはずだ。