ボクシングPRESSBACK NUMBER
エリート田中恒成が打ち合いを選択。
木村翔の右フックにぐらつくも──。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2020/07/09 11:05
序盤から打ち合いとなった木村(左)と田中の世界戦。試合は判定にもつれ込んだ。
最初に読み上げられたスコアは114-114のドロー。
「もともとやろうと思っていたボクシングでしたけど、打ち合える、前に出られるという姿を見せた上であれをできたので、より効果はあったと思います」(田中)
それでもあきらめない木村に、田中は11回に入ると再び打撃戦で対抗する。
最後は両者ともに力を振り絞っての打ち合い。会場が大歓声に包まれる中、終了のゴングが鳴ると、田中は思わずへたり込んだ。
採点発表の前、さまざまな思いが頭を駆け巡ったのは木村だった。
「すげえ勝ったとも、すげえ負けたとも思わなかった。セコンドからはラウンドが終わってコーナーに戻るたびに『大丈夫だ』って言われてましたけど、採点は分からないですよね。だから、『チャンピオンはドローでも防衛だな』なんて考えていたんですけど……」
最初に読み上げられたスコアは114-114のドロー。そして続くアナウンスは115-113、116-112。
勝者はニューチャンピオン、田中だった。田中の名前が告げられると木村はがっくりと頭をたれた。
田中は終始冷静な表情で判定のコールを聞いていた。「勝ったと思いましたから」。その自信は最初にドロー採点が読み上げられてもまったく揺らぐことはなかった。