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コロナに苦しんだディバラの逆襲。
「調子はよくない」のに芸術弾連発。
posted2020/07/04 11:00
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph by
Getty Images
「ひどく咳が出て熱もあり、夜寝ると寒気もする。最初はウイルスのせいだとは思ってなかったんだけど、ルガーニやマテュイディにも起こったことだったんだ。ユベントスのチームドクターからは、薬は摂らずにビタミン剤を飲んで静養するように言われた。そうして時間が経つにつれて良くなっていったんだ」
今年3月、ユベントスのパウロ・ディバラは母国アルゼンチンサッカー協会のビデオインタビューに答え、そう証言していた。
彼は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響をもろに被った1人だったのだ。ダニエレ・ルガーニやブレイズ・マテュイディに感染が発覚し、チームは自主隔離措置を取る。そしてディバラ自身も、実際に症状を訴えて苦しんだ。
快方直後は「5分で息切れ」も。
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幸い重症化には至らず、ドクターの勧め通りビタミン剤の服用と静養で症状自体は快方に向かった。だが自主トレーニングを始めた当初は「5分やったら息切れした」(ディバラ)というほどに呼吸器がダメージを受けており、しかも症状が出ていないのにPCR検査では陰性の結果が1カ月半に渡って出てこない。
そうなると不安が募る。大勢の感染者が出たサンプドリアのクラウディオ・ラニエリ監督は「ウイルスにかかった選手は、その前に比べて回復に数秒ほど時間がかかるようになっていた。これだと実戦のリズムに耐えられるかどうか。心肺機能にどれだけの影響が出るのか我々はわかっていない」と語っていた。
ところが6月20日のセリエA再開以降、最も輝いている選手の1人がこのディバラだ。ボローニャ戦、レッチェ戦、ジェノア戦と3試合連続ゴール。スクデット争いで急追してきたラツィオを勝点で再び引き離す原動力となっている。
「まだ調子自体はよくはない」と彼自身は地元メディアに語ってはいたが、ピッチで見せる頼もしさはまさしく10番のそれだ。