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ホン・ミョンボに挑み、敗れ、学んだ。
「韓国型サッカー」とは何なのか?
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byYONHAP NEWS/AFLO
posted2020/06/24 11:40
W杯に4大会連続出場、韓国代表史上最多136キャップを誇るスーパースターのホン・ミョンボ。大韓サッカー協会理事として活躍中。
「あら? なんで誰も俺を捕まえないんだ?」
'13年7月、それを聞けそうな機会がまったく意外なところで現れた。韓国で行われた東アジアカップ(現E-1)の最終戦で日韓が対決した時のことだ。
雨の降るチャムシルスタジアムで日本が柿谷曜一朗の2発のゴールで2-1の勝利を収めた。
その試合後、取材エリアにホン・ミョンボがひょっこり現れた。
選手は試合後ここを通過する義務があるが、監督は別だ。義務ではないから、数は少ないもののここを通って言葉を残す人もいるが、通らずにチームバスに乗ってもなんら問題はない。
周囲を見渡しながら、こんなことを言っている。
「あら? なんで誰も俺を捕まえないんだ?」
あっ、と驚いた。あまりに突然過ぎて「韓国型サッカーとは?」ということに頭が回らなかった。当座の試合リポートのほうがはるかに重要だった。ひとつだけ聞いた。
――日本の印象は?
「今日の日本は、何も出来なかったと思います」
それだけ言うとさっと去っていった。確かに韓国が内容で圧倒するなか、日本がカウンター一本で勝ったというゲームではあったが……ちょっとムカッときた。
後に思ったが、この行動はおそらく本人のちょっとした「いたずら心」もあったのではないか。「日本に負けても、俺はメディアにビビってねえよ」という。
質問がいきなり広報に遮られて……。
翌'14年のW杯前に、韓国代表を取材する機会があった。ソウル郊外の韓国代表トレーニングセンターでの練習時のことだ。大会直前の国内での親善試合前だったと思う。「囲み」の取材で挙手。広報に指名された。やっぱりあのテーマが気にかかったから、韓国語で聞いた。
「韓国型サッカーということを標榜しましたがここまで……」
「はい、その質問は無しで」
なんと広報に遮られた。囲み取材後、話を聞くと「今現在と直接関係のあることだけを聞いてほしい」ということだった。恐るべしアウェー。まあ受け入れるしかないかな、というところだった。