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ロナウジーニョ「早く帰りたい」
バルサ愛を語る一方で勾留長期化。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2020/06/20 20:00
2007年、メッシにアドバイスするロナウジーニョ。バルサで輝いていた頃の彼が戻ってきてほしい。
バルサ贔屓紙にはクラブ愛を伝えた。
そして6月9日、スペインはバルセロナのスポーツ紙「ムンド・デポルティーボ」にインタビュー記事が掲載された。
やはり黒のベレー帽で、黒いTシャツの上に白と黒の長袖を羽織り、白いパンツをはいている。バルセロナのユニフォームを手にしたり、クラブの旗を掲げてみせた。口を少し開いて特徴のある前歯を見せているが、彼のトレードマークである大輪の花のような笑顔はない。
「これまで在籍したすべてのクラブに愛着があるが、僕が最も幸せだったのはFCバルセロナで過ごした数年間だ。バルセロナの町も、自分にとって第二の故郷となった。今回の事件については、FCバルセロナの関係者、元チームメイト、サポーターたちから多くの励ましのメッセージを受け取った。心から感謝している。
今はほぼ毎日、ホテルのスポーツジムで運動し、大広間でボールを蹴って心身の健康を保とうとしている。でもできるだけ早くこのような生活から解放されて、ブラジルへ帰りたい」
帰国がいつになるか見当がつかず。
パラグアイ警察は、3月6日の逮捕から最長で6カ月間、ロナウジーニョとアシスを拘束できる。すなわち、2人は9月6日まで勾留される可能性があり、実刑判決が下れば、パラグアイ国内で刑に服さなければならない。
現時点では、2人の帰国がいつになるか、誰にも見当がつかない。
ただし母国でも、自身が広告塔となったデジタル通貨のねずみ講(オーナーの1人、という触れ込み)に出資して損失を被った150人の顧客からの約3億レアル(約63億円)の損害賠償請求、かつて事実上の重婚生活を送った女性からの慰謝料請求など20を超える訴訟が列をなす。
さらに、不動産の土地家屋税の滞納分約750万レアル(約1億5000万円)、違法建築物への罰金支払い約60万レアル(約1260万円)などの支払いも待ち構える。
インタビューに答えたロナウジーニョは、時折笑顔を浮かべているものの、どこかぎこちなく、眼光も弱々しい。彼が置かれた状況を考えれば、それも当然かもしれない。
世界フットボール史上、ファンから最も愛された選手の1人であるこの男が、引退後、かくも苦しく悲しい状況を迎えると誰が予想しただろうか。
少し時間はかかるかもしれないが、彼がまたあの光り輝く笑顔を浮かべる日が来ることを切に願っている。