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「馬が人を育てる」ということ。
桜望と1人の大学生が築いた絆。
text by
中西祐介Yusuke Nakanishi
photograph byYusuke Nakanishi
posted2020/06/20 19:00
昨年1月からコンビを組む名倉賢人(日本大学馬術部・4年)と桜望。旧馬名はジャストチョコレート。
「もし違う馬だったら……」
「影響あります。もし違う馬だったら結果は出せていなかったです。未だに全日本のタイトルが取れず日々模索していたと思います。馬術をこれまで行ってきた中で、『ライダーの自信』というのがメンタル面で大きく影響しています。だからこそ桜望で全日本学生での馬場馬術競技や全日本総合馬術ヤングライダー選手権の優勝に繋がったと思ってます!」
2020年4月4日。新型コロナウイルスのニュースが毎日のように流れ、緊急事態宣言が発出される直前に私は彼らの元を訪ねた。名倉と桜望のラスト1年に向けた意気込みを聞きながら、人馬のポートレート写真を撮るためだ。
彼らが過ごしてきた時間を想像しながらシャッターを切っていく。人馬の表情や仕草を見ていくとお互いの関係が表現される。そこが写真の面白いところかもしれない。
厩舎横でカメラの前に立った彼らは昨年よりもさらに自信を深めているように感じられた。たくさんの同じ時間を過ごしてきたからだろう。とても堂々とした佇まいに今年の活躍を期待せずにはいられなかったが、この数日後から馬術部は全体練習が禁止され、最低限の馬運動のみを行いながら再始動の日を待つことになってしまった。予定された競技会もキャンセルが相次ぎ、目の前の具体的な目標を一時的に失ってしまったが彼らはじっと前を見据えて再スタートの時を待っている。今という時間が彼らを更に成長させてくれるはずだ。
五輪を知る馬が渡すバトン。
今後の目標を聞くと下記の答えが返ってきた。
「全日本総合馬術ヤングライダー選手権連覇と全日本学生での優勝」
「卒業後の進路が希望通りに行けば、まずは全日本大会でコンスタントに結果を出せる選手を目標にして、オリンピック出場の夢をいつかは目標に変えたいと思っています。 最終的には、様々な人達に良い影響を与えるライダーになる事です!」
あの日リオオリンピックを駆け抜けた桜望は、1人のライダーに夢とバトンを渡してくれたようだ。