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「馬が人を育てる」ということ。
桜望と1人の大学生が築いた絆。
text by
中西祐介Yusuke Nakanishi
photograph byYusuke Nakanishi
posted2020/06/20 19:00
昨年1月からコンビを組む名倉賢人(日本大学馬術部・4年)と桜望。旧馬名はジャストチョコレート。
馬は人の気持ちをよく理解する。
日本大学馬術部の男子学生は入部と同時に厩舎横にある寮に住んで馬との生活をスタートする。馬術はただ馬に上手に乗ればいいというわけではない。朝の厩舎作業や馬の手入れなど馬に関わる全てを行いながら馬との信頼関係を築く。学生生活を馬に捧げると言っても過言ではないだろう。
馬は人の気持ちをよく理解する。同じ空間で過ごす時間の中で彼らは真のコンビとなっていくのだ。
名倉に桜望の話を聞くと「自分の考えをしっかり持っている子なので、馬を尊重しつつ様々な技を行う技術を教わりました」という。
その言葉は、すぐに結果として現れた。
登竜門で優勝、大学9連覇に貢献。
2019年5月、歴代オリンピック代表を多く輩出している16歳から22歳を対象にした将来の登竜門である「全日本総合馬術ヤングライダー選手権」で初優勝。そして全日本学生馬術三大大会で五輪種目である馬場馬術個人、総合馬術個人でも優勝し、日本大学の9連覇にも大きく貢献した。
名倉の真面目な性格と競技に対する気持ちを汲み取った桜望は、自らの背中でオリンピックをはじめとする大きな舞台での経験を名倉に伝えようとしたのだろう。彼は馬術にとって最も大事な絆を手に入れていたのだ。
馬術はコンビで1人のアスリートになると言われるが、彼らはその通り一体となり勝利を勝ち取った。
馬はライダーの努力を裏切らない。ウィニングランで喜びの表情を見せる名倉にカメラを向けながらそれを確認した。この経験が1人の若者の将来を大きく変える可能性だってある。
馬に教えてもらうことや影響を受けたことはあるかと聞くとこう返事が返ってきた。