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大事故で生死を彷徨った兄と共闘。
BMX榊原爽が五輪金へ決意新たに。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by(c)Saya Sakakibara
posted2020/06/18 07:30
オンライン取材で決意を語った榊原爽。BMX界から広がる支援の輪にも感謝の思いを伝えた。
「1週間毎に100%を出せたと思えるように」
すぐには回復できないという事実は厳然としてある。しかし、榊原ファミリーは力を合わせて困難に立ち向かおうと決めている。爽はこのように言う。
「魁自身もやっと自分の状況を理解できるようになったのかなという気がします。リハビリには時間がかかることや、今はその過程にいることを分かっています。ただ、クラッシュしたときのことや、そのレースの1、2週前の記憶はないようです」
爽は今、週に6日間のトレーニングを行ない、毎週日曜日に休むというサイクルで過ごしている。
「今は大会がない。先を見すぎると疲れてしまうので、気持ちを保つためにも、1週間単位で考えながらトレーニングをして、1週間毎に100%を出せたと思えるようにやっています」
「1年間は差を縮めるチャンス」
最初はショックだったという五輪の1年延期も、実力を伸ばすための時間ができたと前向きにとらえられるようになった。爽は昨年の東京五輪テストイベントで優勝しているが、実力的には自分を上回るライダーがいると考えている。
「トップライダーたちは26歳から28歳くらいの選手が多い。1年間は差を縮めるチャンス。私にとってはプラスになる」と思っている。
そして、魁という、最高のエネルギーをもたらしてくれる存在がいる。
「子供の頃、先にBMXを始めたのは魁だったし、真剣に取り組み始めたのも魁が先。プロとして活動し始めた時には海外に2人で行って互いにサポートしあってきました。
私は魁が兄じゃなかったら、絶対にここまで来られていません。選手としても人としても、魁がいたから今の私がある。前から尊敬していましたが、今では、あの大事故からここまで回復して来たことも凄いことだと尊敬しています」