ゴルフPRESSBACK NUMBER
今日はミケルソンが50歳の誕生日。
世界で唯一のジョークと“愛され”。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2020/06/16 19:00
50歳のミケルソンが今も米ツアーのトップクラスでプレーしている。それはゴルフ界にとって幸運なことだ。
最後は誰もがミケルソンに味方した。
米ツアー選手の多くが、そういう恩義や感謝の念をミケルソンに対して抱いている。そういう素地もあるからなのだろう。逆にミケルソンが窮地に陥ったとき、誰もが秘かにミケルソンを支える。
かつてメジャーに勝てそうで勝てず、「メジャー優勝なきグッドプレーヤー」と呼ばれていたころ、ミケルソンがバッグの中にドライバーを2本入れたことが大きく取り沙汰され、批判もされた。
それでも彼はマスターズを制し、全米プロを制し、メジャー・チャンピオンへと成長していったが、ことあるごとに米メディアの「餌食」にされた。そのたびに周囲の選手たちは苦笑していたが、最終的には誰もがミケルソンを擁護した。
ハンバーガーを流行らせた?
近年になってからもミケルソンが主人公の「事件」は頻発した。故郷カリフォルニア州の州税制度を公の場でついつい批判してしまったり、長女の高校の卒業式を優先して全米オープンを欠場したり。こともあろうに全米オープンのグリーン上で動いているボールをパターで打ち返して大騒動になったこともあった。
それでもミケルソンは、いまなお愛されている。何があっても、何が起ころうとも、「フィルならOK」と感じ、どうしてだか苦笑させられる。それは、ミケルソンだけが擁している不思議な威力であり、ほとんど魔力に近い。
ミケルソンより一足早くシニア入りした53歳のスティーブ・ストリッカーは、その昔、米国で人気のイン・アンド・アウト(In-N-Out)というハンバーガーのファストフード店でミケルソンと出くわしたときの思い出を、こう語っていた。
「フィルは巨大なトリプルデッカーのハンバーガーを2つもペロリと平らげ、『何か問題ある?』と言いながら満面の笑顔を輝かせていた。あれは、まだフィルが体型を気にしてダイエットをするようになる少し前のことだった」
何を隠そう、イン・アンド・アウトのハンバーガーを「絶品だ。とても美味しいし、ヘルシーだ」と大真面目に絶賛し、米ツアーで流行らせたのはミケルソンだった。
そのくせ、そのハンバーガーを食べている姿を撮影されることは「絶対に困る。大口を開けて食べている写真が出回ったら、この僕のイメージがそこなわれる」と頑なに拒否。そこが、いかにもミケルソンらしかった。
そう言えば、来日して日本の大会に出場した際、「撮影はウェルカムだよ」と言ったにも関わらず、「サムライの鎧兜(よろいかぶと)の衣装でクラブを振る姿を撮影させてほしい」というゴルフ雑誌のリクエストを「イメージダウンになる」と言って拒否していたことを、私も今、思い出した。