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チェ・ヨンスは本当に怖かった……。
驚愕の“パネンカ”と取材激闘秘話。 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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photograph byPenta Press/AFLO

posted2020/06/13 20:00

チェ・ヨンスは本当に怖かった……。驚愕の“パネンカ”と取材激闘秘話。<Number Web> photograph by Penta Press/AFLO

2013年にはアジア年間最優秀監督も受賞している崔龍洙。現在はK1リーグのFCソウルを率いる。

エスクデロ競飛王の恐怖のコメントとは?

 その後も相変わらず「恐怖伝説」を耳にする。2012年に浦和レッズからFCソウルに移籍し、2013年に崔監督の下でACLファイナリストとなったエスクデロ競飛王(現栃木SC)は「外国人選手はとにかく結果」と強いプレッシャーをかけられた。

「ある日突然無視される。リザーブチームに回される。気が抜けてると映ったのでしょうか。でもなんでか分からない。恐ろしいから、とにかく必死にやるんですよ」

 浦和レッズで燻っていた競飛王は崔の下で追い込まれ、急成長した。当初のレンタル移籍から、ソウル側が移籍金を支払っての完全移籍が成立。そして2013年のACL決勝で対戦した広州恒大(中国)のマルチェロ・リッピ監督に「アジア最高の選手」と評されるまでになった。崔の下で「幼き日を過ごしたアルゼンチン時代の闘志を思い出した」のだという。

これからも“開いて、閉じて”が繰り返される。

 いっぽうで“開いている”時もある。'14年5月7日、ACLラウンド16第1レグ、川崎フロンターレ戦では等々力の地で3-2の勝利。

 この時の試合後の会見では、日本メディアからの「JリーグとKリーグの違いは?」という主旨の質問に、通訳の言葉を待たず答えた。本人はJリーグ在籍時、日本語はほとんどメディアの前では口にしなかったが、かなり理解していたのだった。返答こそ韓国語だったが。

「日本の選手は、ボールをキープしている時に目線を外してプレーするのが上手いですよね。だから韓国の選手は混乱する」

 細かいディティールを話す。いわば勝利の後のリップサービスだった。

 '16年から1年、中国の江蘇蘇寧での監督を経験。'18年10月からFCソウルの監督に復帰した。これからもお会いするたびに“開いて、閉じて”が繰り返されるのだろう。

 分かってます。特に日韓戦の時にはそうやって明快な態度を示してくれたほうがいい。戦うべき時は徹底的にやる。日韓戦たるもの、そういうものだ。

 ただ、いつか調子いい時にお話を伺いたい。あの「考えて走る」イビチャ・オシムのジェフユナイテッドにあって、運動量より「ペナルティエリア内で勝負」と自負した崔龍洙という存在は、「尊い例外」だったのではないか。'03年の1年のみでオシムの下を去るが、その年も24試合で17ゴールを決めたのだ。自らの存在をどう捉えていたのだろうか。

 そして、あの日のパネンカのことも。

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