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チェ・ヨンスは本当に怖かった……。
驚愕の“パネンカ”と取材激闘秘話。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byPenta Press/AFLO
posted2020/06/13 20:00
2013年にはアジア年間最優秀監督も受賞している崔龍洙。現在はK1リーグのFCソウルを率いる。
「狙いさえすれば得点王を獲れたと思う」
ゴールを決めても完全に不機嫌。この時の崔の考えを、翌年の冬に知ることになる。
'04年2月、崔が京都サンガに移籍した年の開幕前にインタビューした。こんなことを言っていた。
「得点王宣言はしませんよ。優勝のために何ゴール必要か、ということも考えない。興味がないんですよ。Jリーグのここまでの3年間、狙いさえすれば得点王を獲れたと思う(実際に当時、3年間で73試合54ゴールは「J歴代最高得点率」だった!)。でもそんなことよりもチームが勝つこと。パスしてゴールが決まって、勝てるならそれが何よりも大事」
勝たなきゃ何にも意味がない。ストライカーたるもの結果によらず自分のゴールには喜びそうだが、崔は違った。
ちなみに、1対1でインタビューしても、彼はやっぱり怖かった。
――チームは今季、3-5-2に取り組んでいますね!
「……それは、監督に聞くことだな……」
インタビュー時のちょっとしたテクニックとして、答えの後に少し沈黙を作って、相手の言葉を促すやりかたがある。しかし崔の場合はまったくダメだった。ただ沈黙が続くだけだった。
お互い歩み寄って、握手をするまでになった!
'06年にFCソウルで引退後、すぐにチームのコーチ(晩年はプレーイングコーチとして在籍)となった。するとアジアチャンピオンズリーグが顔を合わせる機会となっていった。時には向こうから「おお」とこちらに気づいてくれ、お互い歩み寄って、握手をするまでになった。
'12年には驚くべき姿を目にした。
'12年7月5日に行われた、Kリーグオールスターゲーム。'02年W杯10周年を記念して「TEAM2002(当時のOBチーム)」と「TEAM2012(Kリーグオールスター)」が対戦。崔龍洙は'02年W杯メンバーとして試合に参加した。