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ジャスティン・ローズの究極の優しさ。
母国で女子選手の大会を7つも主催。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2020/06/09 19:00
チャリティの精神が共有されているゴルフ界でも、ジャスティン・ローズの優しさは特別だ。
平凡で退屈な日々の一歩を大切に。
鳴り物入りでプロデビューし、無数のスポットライトを浴びながら、あっという間に暗闇に転落し、苦しみ続けてきたローズは、誰も振り向いてくれない日々の中、孤独の意味を感じ取り、同時に、マイナスをプラスへ変える楽しさも知ったのだそうだ。
「平凡で退屈な日々。孤独な日々。でも、そこで刻む一歩一歩が、じわじわ効いてくる」
初優勝後は、1つ勝ったら次々に勝った。2013年全米オープンでメジャー初制覇。2016年リオ五輪で金メダル獲得。2018年の秋には世界ランキング1位にも輝いた。
希望を打ち砕かれ、落胆や孤独を味わった末に再び輝きを取り戻したローズだからこそ、周囲に向ける彼の視線は、いつも優しくきめ細かい。
困っている人を放っておけなかった。
あるとき、ローズはこう思ったという。
「もしも、僕が十分な食べ物を得ることができず、十分な栄養を取ることができない環境にあったら、いいゴルフなどできるはずがない。きっちり食事ができなかったら、子供たちは、いい学習などできるはずがない」
常に誰かを気遣い、お腹が空いている人、困っている人、苦しんでいる人がいたら、迷わず手を差し延べる。そういうローズだからこそ、戦う場を失ったままの女子選手を放ってはおけなかったのだろう。
だから、7つもの大会をスポンサードした。そんなローズの究極の優しさは、きっと強さとなって、彼のゴルフに反映されるはず。私はそう信じている。