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伊藤美誠と中国選手の本当の距離は?
松崎コーチが語る転機と金メダル。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byITTF
posted2020/06/07 11:35
松崎太佑コーチと伊藤美誠。日本卓球界の悲願である中国超えへの期待が2人に寄せられている。
世界2位でもまだ1度も勝てていない相手。
東京五輪まで1年以上あるが、金メダルへの道は容易ではない。世界ランキング2位まで上り詰めたが、トップには過去シングルスで4戦して1度も勝てていない陳夢がいる。世界ランキングのポイントがダントツの女王を倒さない限り、金メダルは見えてこない。
――東京五輪は中国選手への戦略が重要になってきますが、陳夢選手にはシングルスで1度も勝てていません。
「陳夢選手は今、一番強いですが、東京五輪までには1勝はしておかないといけない相手です。このまま一度も勝てないままだと、いざ五輪で対戦した時に自信を持ってプレーされてしまいます。1ゲームを取られようが2ゲーム失おうが、メンタル的に落ちず、怯まない。
でも、1回でも勝っておけば五輪で1ゲーム取った時、相手が『あれ?』とメンタル的に落ちてくるのでチャンスが出てくるんです。そのためにも東京五輪までの直接対決の結果がすごく重要になってきます。ただ、中国には他にも強い選手がたくさんいますからね」
――でも、中国選手への苦手意識はないですよね。
「それはないですが、中国のトップ選手に比べると、美誠の実力はまだ落ちます。世界ランキング2位になっていますけど、その順位の力はまだないと思っていますし、僕はランキングよりも中国の選手との直接対決でどれだけ勝つのかというのが大事だと思っています。
陳夢選手には1度も勝てていないですし、孫穎莎選手や王曼昱選手には昨年、負け越しています。昨年の4月以降、五分五分で戦えているのが丁寧選手ぐらいで、対戦成績を見てみると中国の若い選手に勝てていないんですよ」
――中国の壁は厚い。
「それだけすごい量と質の高い練習していますし、相手よりも基礎能力が高いのでちょっと落ちても勝てるんです。しかも、どんどんいい選手が出てくるのでトップ層が非常に厚い。それに中国の選手は世界選手権や五輪など大きな大会にはしっかりと仕上げてきます。
リオ五輪では4つの金メダルを独占しましたからね。正直、ワールドツアーでは五分五分で戦えたとしても五輪で勝つのは難しいですし、普段の大会で勝てない選手に五輪で勝つのはもっと難しいですね」