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小林悠が卒業文集に綴ったことは?
母への感謝、親となった今の気持ち。
posted2020/06/05 20:00
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
J.LEAGUE
新型コロナウイルスの影響でJリーグの中断が続く中、様々な選手がこの期間を使って自ら情報発信を始めるようになった。
クラブやメディアを通した発信ではなく、自分たちで直接サポーターに声や言葉を届ける。ひと昔前なら考えられなかったことだが、SNSの進化によって情報発信の方法が変化し、ブログやYouTube、ライブ配信など、様々なコンテンツを用いて自分たちのリアルな“今”をお茶の間に届けている。
川崎フロンターレに所属するエース・ストライカーの小林悠も、この期間に自ら情報を発信するようになった1人だ。クラブとしての活動自粛が続き、なかなかサッカー選手としての日常を送れない中、自分に何ができるかを考えるようになった。
「サッカー選手からサッカーを取り上げたら、本当に何もなくなってしまうと思いました。息子に『パパ何してるの?』と言われるほどです(笑)。それにサポーターの中には、サッカーのある生活から離れ過ぎてつまらないという人もいる。みんなの前でプレーを見せることができず、サッカー選手としての価値が無くなっている今、少しでも価値を見出すために自分から発信するように心掛けています」
始めたのは文章や写真、イラスト、音楽、映像などの作品を投稿できるプラットフォーム「note」を使って、自身の生い立ちや学生時代に考えていたことなどを赤裸々に告白すること。世間が沈みかけている時期だからこそ、サッカー選手としてサポーターを楽しませること、そして自分を改めて知ってもらうきっかけ作りをしている。
母の笑顔が最大の活力だった。
何せ小林の子供時代は苦難の連続だった。
幼少期に両親が離婚。小さい頃は1歳上の兄と共に母子家庭で育った。小学校時代の何よりの楽しみは、サッカーをする自分を応援にきた母親の前でゴールを奪うこと。「お母さんが喜んでくれる姿を見られるのがすごく嬉しかった」と振り返るように、母親を喜ばせることが最大の活力だった。
また、小学生の時は関東選抜や東京選抜に選ばれて将来を嘱望されていたが、中学校になると身体の成長で遅れをとって大挫折。何度もサッカーをやめようと考えたことがあったと言う。