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「マイナー選手の解雇ゼロが重要」
苦境ロイヤルズが放つメッセージ。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2020/06/05 07:00
ロイヤルズは2015年、生え抜きのエリック・ホズマー(現パドレス)、ロレンゾ・ケイン(現ブルワーズ)らを擁し30年ぶりの世界一に輝いた。
ロイヤルズ、解雇ゼロへの熱い思い。
そんな中、ロイヤルズはマイナーリーガー全員だけでなく、全職員に対し、今季中の契約と給与を全額保証することを発表した。一部の高額所得職員の給与をカットするものの、後日、その損失分は補てんすることで、苦境を乗り切る方針を固めた。
カンザスシティーと言えば、メジャーではスモール・マーケットのひとつで、ヤンキースやドジャースのようにスーパースターが居並ぶわけでもなく、資金力が豊富なわけではない。それでも、解雇ゼロを決めた裏には、熱い思いが込められていた。
デイトン・ムーアGMは、地元メディアとの電話会見で語った。
「ルーキーリーグや1Aから昇格できず、誰にも知られていないマイナーの選手は、10~15年のベテラン選手よりも、野球界の成長にインパクトをもたらす。彼らは自分の地元に戻ってゲームを教え、アカデミーで働いたり、コーチ、スカウトになったりして、球界の成長に貢献する機会を持つようになる。彼らは情熱的で、球界を継続的に発展させてきた。だからこそ、我々は誰ひとりとしてマイナーリーガーを解雇しないことが、とてもとても重要なことだと感じた」
野球が再開した時、結果が表れる。
実際、2015年には、優秀なスカウティングと定評のある育成力を生かし、生え抜きの選手を中心に大躍進を遂げ、ワールドシリーズを制した。その裏に、数多くのスタッフ、関係者の労力があったことを認識しているからこその英断だった。
メジャーリーグは、機構側と選手会の折衝が難航しているものの、7月上旬の開幕を目指す姿勢は変わっていない。その一方で、マイナーの公式戦は中止の方向で進んでおり、来季のチーム数削減も確実視されている。
マイナーリーグに情熱を持ち続けるチームと、冷酷なチームの明確な相違点―ー。
野球が再開した時、そして数年後、その結果が表れるに違いない。