濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
無観客試合で異例のデビュー戦。
“時代”と生きるレスラー石川奈青。
posted2020/06/04 19:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
女子プロレス団体アイスリボンの新人レスラー、石川奈青(いしかわなお)は5月4日にデビューした。ゴールデンウィーク、というより緊急事態宣言真っ只中にプロレスラーとして産声をあげたのだ。無観客大会でのデビュー戦であり、今のところファンの前での公式戦を経験していない。
もともと、アイスリボンは5月4日に横浜文化体育館でのビッグイベントを予定していた。しかし緊急事態宣言を受けて大会が延期に。石川のデビューもいつになるか分からなくなった。
すでに昨年8月の段階でエキシビションマッチの連戦を敢行し、内容が認められて9月の横浜文体でデビューするはずだったのだが、この時は病気で欠場している。
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「デビュー戦が2回流れるっていうのは、プロレスと縁がないということなのかなと……。誰のせいにもできないので仕方ないんですけど。とにかく先のことは考えず、日々の練習をするだけでした」
4月上旬の心境を、石川はそう振り返っている。
プロレスへの気持ちを切らさないために。
目標を失った彼女のメンタルを慮ったのは、取締役選手代表の藤本つかさだった。
「選手によって、デビューできるかどうかの基準はいろいろあります。まだプロとしてつたない部分があっても、それが魅力になることもあるのがプロレスなので。石川の場合はエキシビションも経験して力はありました。だから余計に待つのが辛かったはず。去年9月のデビューが延期になってから、よくここまで我慢できたと思います。
無観客試合でのデビューは、させる側としても戸惑いはありました。ただこれ以上、待たせるとプロレスへの気持ちが切れてしまう可能性がある。5月の頭、緊急事態宣言が延びそうだというタイミングで、本人の意思を確認してデビュー戦を組みました。本当に急に決まったんですよ。石川は仕事もしてますし、自立した大人。デビューが延びて“プロレスがなくても生きていけるし……”となってほしくなかった」
普段、石川はラジオの交通情報案内などの仕事をしている(だから本来、お盆休みやゴールデンウィークは忙しいそうだ)。プロレスを知ったのは、松井珠理奈たちがプロレスラーを演じたドラマ『豆腐プロレス』などアイドルカルチャーの流れからだった。