フランス・フットボール通信BACK NUMBER
サッカーの偉大な記録を打ち立てた、
女子クラブ・コリンチャンスの奇跡。
text by
エリック・フロジオEric Frosio
photograph byFacebook SC Corinthians Paulista
posted2020/05/30 11:30
写真は昨年10月にコパ・リベルタドーレスを制覇した時のもの。“コリンチャンス・マシン”の快進撃は続く。
有能で、十分な権限を持ったガンバレの活躍。
男子サッカーが圧倒的な人気を誇るブラジルにおいて、これは特筆すべきことであった。
「もちろんまだまだ男子とは比べるべくもないけれども、男子と同等の権利を得るための契機にはなり得る」とエリカは語る。
「仕事の条件や環境であれ食事やサラリーであれ、女子もそれなりの配慮をされてしかるべきでしょう。それこそが私の闘いであり、すべての女子チームがコリンチャンスのような恵まれた環境でプレーできるようになることを私は願っている」
コリンチャンスがここまで模範的なクラブになったのは、女子サッカー分野で評論家の第一人者であるシンティア・バルレンが《プロジェクトのアーキテクト(建築家)》と名づけたクリス・ガンバレの存在はとてつもなく大きいという。
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バルレンはガンバレをこう評している。
「彼女は経営者として有能だし経験も豊富で、財政面での裁量権もあるから選手の生活基盤を向上させ、スタッフとともにクラブを安定させることができた」
アルツール・エリアス(38歳)はオウダックスとの提携解消後も監督の地位に留まり、グランジやカカウ、レレ、パルダルといったオウダックスの主力を引き抜いただけでなく、タミレス(フォルツナ・ヒョリング)やアンドレッシーナ(ポートランドトーンス)、エリカ(PSG)らブラジル女子代表選手を獲得してチームを強化した。
その結果、2018年にはブラジル選手権を獲得し、翌年はコパ・リベルタドーレスも制覇して南米の頂点に立ったのだった。
しっかりした成長戦略に則った成功だった。
エリアスが絶対的な信頼を寄せるのが、フィジカルトレーナーやGKコーチ、ビデオアナリスト、栄養士、心理療法士、フィジオセラピストといった専属のスタッフたちであった。
「彼らは能力が高く知性もある。成功の70%は彼らの力だと思う」とエリカも認める。
エリアス自身はこう語っている。
「スタッフやグループが安定しているのがチームの力になっている。ベースは強固で、同じ人たちがずっと一緒に働いている」
その安定感が、4つの理念を打ち立てた青年監督に、プレーにおけるオートマティズムの確立を可能にしたのだった。
ちなみにその4つとは、「言葉と視覚によるコミュニケーション」、「強度の高いテクニック」、「プレーへの積極的な参加」、「先を読む能力を高めること」である。
これらは選手同士のリスペクト(尊敬)とコオペレーション(協力)というふたつの基本原則に立脚している。
こうしてすべての要素が有機的かつ効果的に絡み合い、コリンチャンスは攻撃的で魅力に溢れたサッカーを実現した。
直近の47試合で147ゴール。1試合平均3得点という数字が、内容の濃さを物語っている。