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晩成FWアドゥリスの引退と名人芸。
181cmでも空中戦最強だった理由。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2020/06/01 18:00
新型コロナウイルスの影響でコパデルレイ決勝を戦えなかったが、アドゥリスの空中戦の強さは誰もが認めるところだった。
空中戦の数値でラモス、ピケを凌駕。
2016年3月には、およそ5年5カ月ぶりにスペイン代表に招集されて、イタリアとの親善試合でチームを敗北から救うゴールを決めた。さらに同年11月のW杯予選マケドニア戦でも1得点し、スペイン代表の最年長得点記録を35歳と275日に塗り替えている。
彼の最大の特長は空中戦の強さだった。
身長は181cmだから小さくはないけれど、格別大きくもない。なのに、たとえば先述の2009-10シーズンは5ゴールをヘディングで決めている。バレンシアに移った翌2010-11シーズンも10得点の半分がヘディングだった。
空中戦を制した回数に目をやると、これも30代になってからがすごい。
2014-15シーズンのリーガでは1試合平均5.9回、アスレティック復帰から2016-17シーズンまでの平均は約4.6回である。
リーガを代表するCBで、やはり空中戦を得意とするR・マドリーのセルヒオ・ラモス(34歳)の過去10年の最大値が2013-14シーズンの4.3回。身長194cmのバルサのジェラール・ピケ(33歳)も同シーズンの3.8回だから、アドゥリスの数字がずば抜けていることがわかる。
名DFアジャラから学んだジャンプ。
なぜ、それほど強いのか。
元アルゼンチン代表のCBロベルト・アジャラを手本にしていたという彼は、1999年から2004年までの主戦場だった2部Bリーグで空中戦のカギとなるジャンプを磨いたと、バレンシア時代に応じたインタビューで語っている。
「2部Bではピッチ上でなめらかにパスが繋がれることはあまりない。だから胸を使ってボールを足下にうまく落とす必要があった。そのためには自分がジャンプしたときの最高到達点がわかっていなきゃいけない。ジャンプのタイミングも重要だ」
新型コロナウイルス禍さえなければ、アドゥリスはその並外れたキャリアに相応しい檜舞台を踏んでから選手生活に終止符を打つはずだった。
4月18日に予定されていたR・ソシエダとの国王杯決勝戦である。スペインで最も熱いダービーマッチの1つに数えられる試合が、タイトルを懸けて行われるはずだった。
しかしリーガの再開が見えてきた現在もなお、この試合に関しては新たな日時について候補日すらあがっていない。UEFAは8月初めまでに優勝チームを決めるよう求めているが、アスレティックもR・ソシエダも無観客での決勝戦強行を拒んでいるからだ。たとえ来季のEL出場権を失おうとも。