濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
何より“魅力的なレスラー”だった。
木村花の記憶は笑顔とともに。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMasashi Hara
posted2020/05/26 20:00
デビュー前から注目され、期待以上の成長を見せていた木村花。感情表現の豊かな闘いぶりでファンを魅了した。
木村響子と花の親子対決に見た厳しさ。
木村花は1997年9月3日、木村響子の娘としてインドネシア人の父との間に生まれた。子供の頃からプロレスラーでシングルマザーの響子につれられて試合会場を訪れ、レスラーや関係者に可愛がられていたそうだ。武藤敬司が校長を務める『プロレス総合学院』の1期生として入学式に出席した時には「あれ木村さんとこの花ちゃん?」と多くの人間が驚いた。
プロデビューは2016年3月30日。対戦相手は学院の同期、後に“筋肉アイドル”として芸能界でも活躍する才木玲佳だった。
同年8月には新木場1st RINGで『デビュー記念興行』が開催された。
母の人脈もあり豪華なメンバーが集まったイベントのメインは響子と花の親子対決。母は自分と同じ道を選んだ娘を突き放すように攻め込み、腕ひしぎ十字固めでギブアップさせた。腕十字は、総合格闘技の試合をしたこともある響子にとって「自分の中の刀というか、相手に何をやられても最後はこれで勝てるよっていう」武器だった。
「プロレスラーはそういうものも身につけなきゃいけないんだよって伝えたかったんですよ」
「プロレスからは絶対に逃げられない」
この話を聞いたのは、対戦を終えた直後の親子対談インタビュー(『ゴング』誌掲載)だった。
「2歳の時からおんぶも抱っこもなしで歩かされてたらしいんですよ、私」
そう明かしたのは花。響子は親としての思いを聞かせてくれた。
「この子を若い時に産んだのもあったし、周りに小さい子がいなかったので、みんなチヤホヤするんですよね。それがよろしくないなって。だから厳しく育てなきゃって」
結果、万年反抗期になってしまったと苦笑する母。だが娘は、どうしたって母と比べられてしまう業界に進んだのだった。
「もともと私はダメダメで、根性もないしすぐ言い返すしで、何も長続きしたことがないんですよ。でもプロレスからは絶対に逃げられないじゃないですか。そういう環境に身を置いたほうがいいんだろうなって」(花)