濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
何より“魅力的なレスラー”だった。
木村花の記憶は笑顔とともに。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMasashi Hara
posted2020/05/26 20:00
デビュー前から注目され、期待以上の成長を見せていた木村花。感情表現の豊かな闘いぶりでファンを魅了した。
オリジナルのレスラー像を目指して。
この対談で、響子は「“木村響子の娘”以外の部分を確立してほしい」と花への期待を語っていた。実際、花はそのキャリアの中で自分にしかないレスラー像を作り上げていく。
チアリーダー風のコスチュームだったこともあれば、母も所属したユニット「大江戸隊」では黒装束。髪を染め、自身のユニット「TOKYO CYBER SQUAD」を結成すると存在自体がよりカラフルになっていった。
“華麗な空中殺法”や“いぶし銀の関節技”を使うタイプではなかった。技がどうこうではなく、陽気で強気なところがファンを引き付けた。いい意味で生意気といえばいいだろうか。以前は芸能界を志していたからか、プロレスでも“表現”に自覚的なように見えた。
「女子プロレスをまだ知らない同世代の人たちに」
昨年、所属するスターダムが上場企業ブシロードの傘下に入ると、花は記者会見でこんなコメントを残している。
「女子プロレスをまだ知らない同世代の人たちにも広めていきたいです。よく考えるのは、施設で暮らしている子や、刑務所にいる人たちに試合を見せたいということ。自分たちの可能性、こういう生き方もあるんだよっていうのを伝えたいです」
別の会見では、より女性ファンを意識した言葉も。
「もともと日本人男性受けは考えてないんですよ。こういう仕事は恋愛も表に出せないことが多いけど、私はテラスハウスに出たり、恋愛もオープンにしていきたい」