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ネットで炎上被害にあったライターが
考える、木村花が受けたものとは?

posted2020/05/25 20:30

 
ネットで炎上被害にあったライターが考える、木村花が受けたものとは?<Number Web> photograph by Essei Hara

日本の女子プロレス界で逸材と目されていた木村花。この悲劇を繰り返さぬために、何ができるのか。

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph by

Essei Hara

 SNSで見も知らぬ者から攻撃を受けた経験をお持ちか。

 筆者はある。

 忘れもしない。2006年12月31日に秋山成勲が引き起こした、いわゆる“ヌルヌル事件”が事の発端だった。事件の現場となった試合の、対戦相手の桜庭和志の記述をきっかけに、運営していたブログが炎上してしまったのだ。

 ある日、ブログを見ると、目を疑った。まるでストップウォッチの0コンマ何秒の数字のように、コメント欄の書き込みがどんどん増えていくではないか。しかも、その大半は「死ね」「人生終了」「早くライターを辞めろ」といった罵詈雑言だった。

 その言葉が次々と重なり合うようにして胸に突き刺さってくる。

 程なくして、思考停止に近い状態になった。得体の知れない汗が吹き出す。世間全体が敵に回った錯覚に陥った。

 なぜ見も知らぬ人の指図で死んだり、辞めなければならないのか。

 時間が経つと反論したいという思いが頭をもたげたものの……そういうことをさせる機会を与えないほどのスピードと数を武器に顔は見えず本名もわからない発信者たちは攻撃を繰り返し続けていた。

まだ少女だった頃の木村花との出会い。

 先日、プロレスラーの木村花さんが死亡したというニュースを目の当たりにした時、身をもって体験したネットでの炎上騒動が鮮明に蘇った。知っての通り、花さんも、SNSを通じて度を越した誹謗中傷を受けていた。

 もちろん、海外にも配信されている人気の恋愛リアリティショーに出演していた花さんと一介の書き手に過ぎない筆者の炎上の規模には天と地ほどの差がある。時代も違う。うがった見方かもしれないが、それでも、あの気持ちを味わったことのない人よりは多少なりとも痛みを共有できると思った。

 しかも、花さんとは知らない仲ではなかった。

 7年前新宿で行われたムエタイ映画のトークショー後、「タイの映画を見たら、やっぱりタイ料理だろう」という発想で、筆者が道案内する形で新宿のタイ料理屋で関係者たちと一緒に遅いランチをした時が初体面だったと思う。当時花さんは中学3年か高校1年だったが、すでにすれ違う人が何人も振り返るほどの美少女だった。

【次ページ】 テレビ中継の仕事で一緒に頑張った時代。

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