濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
何より“魅力的なレスラー”だった。
木村花の記憶は笑顔とともに。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMasashi Hara
posted2020/05/26 20:00
デビュー前から注目され、期待以上の成長を見せていた木村花。感情表現の豊かな闘いぶりでファンを魅了した。
花は誰よりもファンに会いたがっていた。
強く、カッコよく、自立していて人生のすべてを謳歌する。そのような女性の姿を示すことができる“表現”が、プロレスラーとしてリングに立つことだったのかもしれない。
そんな花は、ファンのことを常に大事にしていた。
今年3月8日、スターダムが後楽園ホールで無観客試合を開催した時、誰よりも観客を恋しがっていたのが花だった。
「応援してくれる人がいないと、試合をしていてもただただ痛いんです。早く会いたいです、ファンの人たちに」
この数カ月、もしファンの声援を受けて試合ができていたら。会場のグッズ売場でファンに試合を誉めてもらったり何気ない雑談ができていたら。彼女の運命はまた違ったものになっていたのかもしれない。そんなことも考えてみたが、もう時は巻き戻らない。
今できるのは、彼女を名前どおり、「花」そのものだった笑顔とともに記憶にとどめることだ。彼女を愛した人たちだけでなく、今回の件で彼女を知った人たちにもそうしてほしいと願う。