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デムーロの“お手本騎乗”が炸裂。
ラウダシオンがNHKマイル制覇。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKyodo News
posted2020/05/11 11:40
ラウダシオンが無敗馬たちに土をつけたことで、この世代の力関係は混沌に戻った。次の顔合わせが楽しみだ。
ラスト200m、「これはイケるかな」。
前半が速くなったのは、向正面で強い追い風を受けたからだろう。直線では逆に向かい風となり、時計を要することになった。
レシステンシアが先頭のまま直線へ。
ラウダシオンが外からレシステンシアに並びかけ、2頭とも持ったままでラスト400m地点を通過した。
ラスト200m手前から2頭の叩き合いが始まった。やはり、牡馬と牝馬が馬体を併せると牡馬のほうが有利なのか、ラウダシオンがじわじわと前に出はじめた。
「これはイケるかなと思って、最後まで差し切れそうな気持ちがありました」とデムーロ。
1完歩ごとに差をひろげたラウダシオンが、2着のレシステンシアを1馬身半突き放し、先頭でゴールを駆け抜けた。
最後に速い脚が無い馬の理想の勝ち方。
「今日の馬場はあまり後ろから伸びなかった。この馬はいつもスタートから最後まで同じペースで行くので、前目で考えていました。風が強かったけど、馬に力があった」
そう話したデムーロは、昨年のアドマイヤマーズにつづく連覇を達成。騎手による連覇は初めてのことだ。これでJRA・GI通算32勝となり、岡部幸雄を抜いて、歴代単独2位となった(1位は77勝の武豊)。
「連覇は嬉しいけど、無観客で寂しい。あまりガッツポーズも出なかったです」
強いが、最後に速い脚を使えないワンペースの馬で勝つにはこうするのだという、お手本のようなレースだった。
ラウダシオンはこれまで1200mと1400mの勝ち鞍しかなく、これが1600mでの初勝利だった。単勝29.6倍の9番人気にとどまったのもやむを得ないところだ。