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支援を断り、UberEats配達員に。
フェンシング三宅諒の本音に迫った。
posted2020/05/09 11:50
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Ryo Miyake
「今日は5時間です。新宿、半蔵門、赤坂、田町に配達して、バイト代は4688円でしたよ」
ロンドン五輪フェンシング銀メダリストの三宅諒は、このゴールデンウィーク中、新宿区、港区エリアを中心に午前、午後と自転車を走らせ、「Uber Eats」の配達員として汗を流していた。
「朝、9時~10時の1時間を午前の配達に充てて、日中は自宅内でトレーニングします。体幹トレーニングなどが中心ですね。身体の免疫力のことも考えて、午後は昼下がりの15時くらいから、また配達を始めます」
2012年、三宅は太田雄貴らとともにロンドン五輪に出場し、男子フルーレ団体で銀メダルを獲得。現在では日本フェンシング界において、五輪でのメダル獲得を経験した唯一の現役選手である。
「東京五輪前の最後の国際大会が新型コロナウイルスによって中止になり、アメリカから急遽帰国することになりました。それが3月のことなので、もう2カ月くらいは対人での練習ができておらず、自宅にいる状況が続きます」
五輪中止、スポンサー支援を断った。
三宅には東京五輪出場を目指し、サポートしてくれる企業があった。ガス会社、不動産会社、保険会社の3社がスポンサーとして、競技活動の金銭的な部分を支えてくれていた。
しかし、三宅は今年1月の入金を最後に、スポンサーからの支援を断った。
「2月あたりから新型コロナウィルスの影響で、世界情勢に暗雲が垂れ込めました。もしかしたら東京五輪が開催できないかもしれない。あるかどうかわからない目標に対して、スポンサーさんにお金を出してください、とは僕は言えませんでした。だから一旦、契約を止めてもらうことにしました」
東京五輪という目標があるからこそ、アスリートと企業の間にはシナジーが生まれる。アスリートが競技で結果を残すことで、企業のイメージやブランド力を上げてくれる対価が支払われる。しかし、中止、または延期になる可能性がある目標に対して、スポンサーとの契約を続けることは三宅にとっては大きなプレッシャーでもあった。