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英雄アイルトン・セナが愛したF1。
1994年5月1日は決意の日でもある。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2020/05/01 11:50
サンマリノGP決勝に挑む前のアイルトン・セナ。世界中が悲しみに包まれたクラッシュから26年が経過した。
死と隣り合わせに変わりはない。
こうした安全性向上によって、F1はその後、20年にも渡って、死亡事故からドライバーたちを守ってきた。これはF1の歴史の中でも最も長い幸福の時間でもあった。
しかし、モータースポーツがスピードの限界を極めるスポーツである以上、死と隣り合わせのスポーツであることに変わりはない。'14年にはジュール・ビアンキが事故に遭い、翌年死亡。'19年にはベルギーGPの前座として開催されていたF2でアントワーヌ・ユベールが多重事故に巻き込まれ、22歳の若さで亡くなった。
FIAの安全性向上に終わりはない。
ウイルスを前にしても歩みを止めない。
セナの死から26年。今年の5月1日は、本来であれば、オランダGPが開催される予定だった。しかし、F1は開幕戦から中止と延期が続いており、オランダGPも延期となった。F1だけでなく、世界はいま、新型コロナウイルス感染症によって、厳しい状況が続いている。
それでも、F1は未来に向けて歩みを止めてはいない。これまでモータースポーツの安全性向上に努めてきたF1は、いま、新型コロナウイルスとの格闘中だ。
イギリスに本拠地を構えるチームのエンジニアたちが、新型コロナウイルス感染症の重症患者の治療に使われる新しい医療用人工呼吸器をF1以外の企業と協力して開発すれば、イタリア・チームのフェラーリも人工呼吸器用バルブと、防護マスク用の接続部品の生産を関係する企業との協力を開始した。
セナが愛したF1は、いま世界の人々の命を救うために戦い続けている。