F1ピットストップBACK NUMBER
チームオーダーの是非やいかに? ペレス、ウェーバー、バリチェロ…「非情な現実」を戦うセカンドドライバーの反乱史
posted2022/12/23 06:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
2022年シーズンが残り2戦となった第21戦サンパウロGPで、優勝争いとは関係のない争いが起き、話題を集めた。その争いの主役となったのは、シーズン2冠に輝いたレッドブルのマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスだ。
このレースでフェルスタッペンは事故の影響で一旦、後方へ下がっていたが、徐々に挽回し、最後のピットストップ後に入賞圏内に戻っていた。71周のレースの67周目には、タイヤに苦しんでいたチームメートのペレスをかわして6番手に上がる。このとき、レッドブルは後方から迫っているフェルスタッペンにポジションを譲るようペレスに指示していた。
ただし、それはフェルスタッペンのためではない。なぜなら、フェルスタッペンはすでにドライバーズチャンピオンを手にし、年間最多優勝記録も更新していたからだ。レッドブルがフェルスタッペンをペレスの前に出したのは、2つ前のポジションを走っていたシャルル・ルクレール(フェラーリ)をフェルスタッペンにオーバーテイクさせるためだった。
チームオーダーの理由とは?
ブラジルGPが始まる前の時点で、ペレスはドライバーズ選手権でフェルスタッペンに次ぐ2位につけていたが、ルクレールが5点差で追っていた。チーム史上初となるドライバーズ選手権での1-2フィニッシュを目指していたレッドブルとしては、ペースが上がらなくなったペレスの代わりにフェルスタッペンを前に出してルクレールをオーバーテイクしてもらい、そのポイントを奪うという狙いがあった。
しかし、フェルスタッペンは目の前を走るフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)を抜きあぐねている間にファイナルラップを迎える。そこでレッドブルはフェルスタッペンに後ろにいるペレスとポジションチェンジを行うよう無線を飛ばした。
ところが、フェルスタッペンはペレスにポジションを譲ることなく、そのままフィニッシュ。チームはペレスに謝罪したが、5点あったルクレールとの差はなくなり、同点で最終戦を迎えることとなったペレスの怒りは収まらない。
「奴の本性がわかった」と無線でチームメートを公然と批判した。いわゆるセカンドドライバーの反乱である。