猛牛のささやきBACK NUMBER
23歳右腕が“冬の武者修行”で変化。
オリックス鈴木優が得たヒントとは。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/04/17 07:00
昨季は約3年ぶりに一軍に昇格し、7月10日の楽天戦でプロ初先発。二軍戦では22試合に登板し、6勝3敗だった。
重要性を学んだ「高めのまっすぐ」。
そして何より大きかったのが、高めのストレートの使い方を学んだことだった。
開幕投手を任された鈴木だったが、その試合は初回にいきなり6失点してしまった。鈴木は日本での配球を土台に、右打者に対するツーシームなど試したいテーマを持って試合に臨んでいたため、最初は、メジャーリーグの経験も豊富な捕手、フアン・センテーノのサインに首を振っていた。しかしそれで連打を浴びたため、「キャッチャーの配球通りに投げてみよう」と意識を転換すると、抑えられるようになったという。その鍵になったのが、高めのストレートだった。
「向こうはフライボール革命が進んでいて、それに対抗するために高めのボールの割合が多くなっていました。日本だったら高めのまっすぐは、先発投手でも1試合に2、3球、見せ球として使うぐらいですけど、あっちは本当に高めのまっすぐを活かしていて、いいバッターが相手だと1打席に1球は投げるぐらいの割合で使うんです。空振りやファールをとるための球として。日本人選手でも今、フライを飛ばそうとするバッターが多くなってきていると思うので、そういう相手には使った方がいいと思いました。
日本はあまり高めのまっすぐを使う考えがないですよね。低めがいい、という美学があるというか……。もちろん低めに投げるという武器は必要ですけど、低めにしか投げなかったら、バッターは低めを狙えばよくなるので、低めも高めも使えるのが一番いい。高めも使えれば、変化球も活きるんです」
早速、今年のキャンプでは、それまでにはなかった「高めのまっすぐ」のサインを作った。
その後の二軍の春季教育リーグや練習試合では、4試合17イニングに登板し、無失点に抑えている。
配球面でも精神面でも新たな気づきを得た鈴木が、一軍の打者と対峙した時、どんな姿を見せるのか。その日が楽しみだ。