炎の一筆入魂BACK NUMBER
初の開幕一軍を目前にして、延期。
カープの若手左腕コンビの心境は?
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2020/04/17 11:40
塹江は高松北高から2015年ドラフト3位で広島に入団。昨年9月には3年ぶりに先発も初勝利ならず。
ほろ苦いデビュー戦だった塹江。
2人はまだ未知数の戦力だ。2人合わせても、通算一軍登板数は33試合にとどまる。左腕不足と言われた広島に2年続けて指名された高卒左腕。台頭するまでの間に、アカデミー出身のフランスアが抑えを務めるまでに成長し、遅咲きの中村恭平が快速球で中継ぎの地位を築いた。入団時に比べても、中継ぎ左腕の争いは激しくなっている。
そんな中、2人は今春キャンプを完走し、開幕一軍入り目前まで生き残った。ともに高みまで最短距離で登るような道程を歩んできたわけじゃない。
塹江は防御率162.00からプロ生活をスタートさせた。入団2年目の2016年、25年ぶりの優勝を決めた翌9月11日、巨人戦の7回にプロ初登板。先頭・長野久義(現・広島)に初球をレフトスタンドに運ばれると、安打の後に連続四球。1死後、満塁から連続長短打を浴びてデビュー登板を終えた。
「150km以上の球で圧倒したいと思っていた」
4年前を振り返り、そう自己分析した。
最大の武器は150kmを超える直球だった。当時の緒方孝市監督もそこに期待して、優勝決定前から一軍に帯同させていた。だが、翌'17年から2年続けて一軍登板なし。二軍でも「打者と勝負できていない」と指摘されるなど、再昇格の兆しも見られなかった。
制球を気にするあまり、自分のことで頭がいっぱいだった。視野は狭くなり、目の前の打者すら見えていない状態。武器を生かすものがなければ、その威力は半減する。二軍での日々で答えをずっと探してきた。力だけで抑えられるほど、プロの世界は甘くなかった。
昨季は一軍登板なしの高橋。
塹江がデビューした'16年に入団した高橋樹も高卒2年目に一軍デビューした。主に中継ぎで10試合に登板し、8月4日には先発マウンドにも上がった。翌年もシーズン終盤から9試合に登板したが、若手枠の殻を破れずに昨年は最後まで二軍でシーズンを終えた。
高橋樹の武器は、塹江とは異なり制球力だ。高校野球の名門・花巻東高で磨いた。入学当初から先輩・大谷翔平(エンゼルス)の残像と戦わなければいけなかった。不安を拭うようにブルペンで投げ続け、身につけたのが制球力だった。だが、プロでは制球力だけでは通用しない。プラスアルファが求められた。
そして迎えた今春、2人は一軍キャンプを完走し、開幕一軍入りを目前にした。実力でそこまで生き残ったのは理由がある。