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『フィールド・オブ・ドリームス』
撮影場所でのMLB公式戦の行方は?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/04/15 07:00
アメリカで野球が国民的娯楽の座に定着するうえで、『フィールド・オブ・ドリームス』が果たした役割は大きい。
ケビン・コスナーが語ったこと。
2014年には映画公開25周年を記念したイベントが行われ、主人公を演じたケビン・コスナーのチームと、彼の父親役(幽霊選手の1人)だったドワイアー・ブラウンのチームの親善試合などが行われた。イベントの一部はMLBネットワークでも放送され、主演のコスナーが番組内でこんなコメントを残している。
「ある男が僕に『父が死ぬまでの2週間、毎晩、あの映画を見ました』と言ってくれたことがあります。彼は『父は他の映画を見る気分じゃなくて、僕らは毎晩、あの映画を見て、いつも同じ場面で泣きました』と教えてくれました。そして、『そういう時間を与えてくれてありがとうございました』と言ってくれたのです」
畏怖の念と感傷が蘇った。
実は『フィールド・オブ・ドリームス』のことをアメリカ人の野球関係者に話すと、決して少なくない人が「ジョー・ジャクソンは右投げ左打ちなのに、映画では真逆になっている」と言うし、農業従事者の人々と話すと「高価な農地を野球場に変えるなんて馬鹿げている」などと言われることも多い映画だ。
昔よりもメジャーリーグの史実に詳しくなり、そういう部分がとても気になって、「最高の野球映画は?」などと問われても『フィールド・オブ・ドリームス』とは答えず、同じコスナー主演の『Bull Durham(邦題『さよならゲーム』)』だとか、ロバート・レッドフォード主演の『The Natural(邦題『ナチュラル』)』だと答えた時期もあった。
それが大きなスポーツ・イベントがすべて休止になって『フィールド・オブ・ドリームス』のテレビ再放送に遭遇し、最初に撮影現場に行った時の畏怖の念にも似た気持ちと、最初に映画を観た時の感傷的な気持ちが蘇った。
町に出入りする人が極端に少ないせいか、現在も「即席」野球場の建設は続いているようだが、もしも感染拡大の影響で建設が大幅に遅れたり、MLBの開幕が8月以降にズレ込んだりすれば、ロンドン・シリーズのように中止や延期になる可能性がある。
自分の周りにある状況を考えれば、決して未来は明るくないが、これから映画のように信じ難いことが起こって、このイベントが成功し、映画のようにハッピーエンドになればいいのにな、と思う。