メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
『フィールド・オブ・ドリームス』
撮影場所でのMLB公式戦の行方は?
posted2020/04/15 07:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
1994年の冬、もう間もなくクリスマスになろうかという氷点下の昼下がりのこと。アメリカの「ハートランド」と呼ばれる中西部の広大な農地の真っ只中を走っていると、やがて、田舎町のどこにでもあるような木製の照明塔が立っているのが見えてきた。
一瞬にして胸が高鳴った。逸る気持ちを抑えながら目印の看板を左折し、敷地に車を入れた。無人の駐車場の地面には雪が残っており、ようやくたどり着いたベースボール・フィールドには当然、誰もいなかった。
氷のようなベンチに座り、雪が降りそうな曇り空を見上げた。自分が深呼吸する音と風が通り抜ける音だけが聞こえた。今は枯れ果てて地面に凍り付いているトウモロコシ畑の向こうから、まるで“シューレス”ジョー・ジャクソンとホワイトソックスの8人が姿を現しそうな気がした――。
フィールド・オブ・ドリームスの撮影現場。
映画『Field of Dreams(邦題『フィールド・オブ・ドリームス』)』の撮影現場を初めて訪れた時のことは忘れない。
アメリカに転居した1997年からの数年間、そこから車で1時間余りの田舎町に住んでいたので、日本や州外から来客がある度に訪れた。
よく晴れた夏の日には、ベンチやファール・グラウンドの芝生の上で家族でピクニックをした。その度に大勢の父と子、あるいは母と子がキャッチボールする姿に遭遇し、その映画がいかに多くの人々の心を捉えているのかを実感したものだ。
MLBがロンドン興行(6月13、14日のカブス対カージナルス戦)の中止を発表した時、真っ先に頭に浮かんだのは「フィールド・オブ・ドリームスの試合はどうなるのか?」だった。