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『フィールド・オブ・ドリームス』
撮影場所でのMLB公式戦の行方は?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/04/15 07:00
アメリカで野球が国民的娯楽の座に定着するうえで、『フィールド・オブ・ドリームス』が果たした役割は大きい。
映画の関連イベントが無くなった時期も。
撮影現場では元々、トウモロコシ畑が映画のように背丈まで伸びる頃になると映画に登場したゴースト・プレイヤーズ(幽霊選手)によるアトラクションが行われたり、アイオワ出身の殿堂入り投手ボブ・フェラー(故人)やレジー・ジャクソンら往年の名選手や映画俳優たちが親善試合が開催されて、その度に1万人前後の人々が同地を訪れたそうだ。しかしその後、映画の主人公が住んでいた農家と内野、そして右翼の所有者であるランシーン家の意向により、それらのイベントはしばらく開催されなくなった。
撮影現場のビジネス化を拒否した理由。
駆け出しのスポーツライターだった頃、それを不思議に思って妻のベッキー・ランシーンさんにインタビューしたことがある。彼女は「撮影現場のビジネス化を拒否した理由」を当時、こう教えてくれた。
「撮影後は農地に戻すという映画の制作会社との契約があったにもかかわらず、そのまま保存することにしたのは、この場所に特別な雰囲気があったからです。今でもそうですが、当時お年寄りが1人でふらっとやってきて映画でも使用されたベンチに座り、ご自分のお父さんを思い出して涙している姿などを見ると、この場所を保存する理由があると思えたものです。
ところがイベントがどんどん大きくなるにつれて、心ない人々が居住区域に勝手に侵入したり、外野のトウモロコシ畑を荒したり、大量のゴミを捨てていくようになり、残念ながら『もううんざりだ』となったのです」
それが今年、MBの公式戦という大イベントが行われることになったのは、一旦はランシーン家が所有することになったすべての土地が、2010年に「Go the Distance Baseball(劇中の台詞)」というグループに売却されたからだった(当時のAP通信の取材で、ベッキーさんは「ロッカーに引き揚げる時が来た」と理由を語っている)。