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なぜコービー・ブライアントは特別か?
「最も身近なスーパースター」の死。 

text by

長澤壮太郎

長澤壮太郎Sotaro Nagasawa

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photograph byGetty Images

posted2020/04/12 19:00

なぜコービー・ブライアントは特別か?「最も身近なスーパースター」の死。<Number Web> photograph by Getty Images

ロサンゼルスの街に画かれたコービー・ブライアントの壁画。その姿には聖人のごとく後光が――。

この後、何をするのか本当に楽しみだった。

 コービーが選んだ第二章の物語は、家族と子供そしてメディアを通じて若者達の心に響くコンテンツの制作でした。

 一部の現地メディアは、コービーが、2013年にアキレス腱を断裂してリハビリをしていた頃から既に第二章への準備が行われており、壮大なプランが用意されていたとも報道しました。しかし、我々は、その計画の序章のほんの一部しか観ることができなくなりました。

 4月5日(現地時間4日)、ネイスミス・バスケットボール・ホール・オブ・フェイム(以降、殿堂)が、2020年にバスケットボール殿堂入りを果たす9名を発表しました。ティム・ダンカン(元サンアントニオ・スパーズ)、ケビン・ガーネット(元ミネソタ・ティンバーウルブズほか)などと揃って、コービーが選ばれたのです。僕たちにとっては、コービー自身の物語を語る最高の場面とも言える殿堂入りのスピーチも、永遠に観ることが出来なくなったということです。

 この殿堂入りを受けて、ステイプルズセンターの外に並ぶレイカーズレジェンド達の銅像の隣に、コービーの銅像が設置されるのも時間の問題だったはずです。豪快なダンクか、華麗なフェイダウェイシュートか、それとも優勝して両手を広げたポーズなのか……コービーがなにを選ぶつもりだったのか、もう誰も知ることができません。

NBAの戦いの次は、家族愛に満ちた世界を……。

 ストイックなまでに技術と精神を磨き、どんな場面でも結果を出し続けてくれた彼は、人生の第二章に関しても、我々の想像を超えるプランを提供することにかなりの自信を持っていたと言われています。

 彼にはいったいどんな世界が見えていたのか――それを披露する前に彼はいなくなってしまいました。

 暗殺者の如く、冷酷無比に相手を倒してきた“ブラックマンバ”――世界中が楽しみにしていた彼の次の章は意外にも、愛と笑顔に溢れた物語だったのかもしれません。

 彼が亡くなったあと、アメリカ出張に行った際、移動中に、ウーバーの運転手と他愛もない会話をしていたら、自然とコービーの話題になりました。こんな出来事ひとつでも、国や人種、文化、宗教の違いを超えて、コービーは人を繋いでくれてるのだな……と感慨深い気持ちになりました。そしてその運転手と、なぜ彼なんだ? お互い納得がいかないよね、と意気投合しあったのです。

 その時、運転手の彼が言った言葉は「きっと今頃、バスケの神様とゲームしてるよ!」でした。ファンだった皆さんにも、バスケの神様達を相手に不屈の闘争心で勝負を挑み続けるコービーの姿が想像できるのではないでしょうか。

 コービー! 天国のレジェンドリーグでも、僕らを熱狂させた最高のプレイを!

 MANBA FOREVER――.

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