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年齢を重ねても記録は伸ばせる!
60代の女性マラソン世界一が語る極意。
posted2020/03/30 15:00
text by
千葉弓子Yumiko Chiba
photograph by
Miki Fukano
どんなジャンルでも何かを極める人は、内なる熱量がとてつもなく大きい。中には周囲のエネルギーをみるみる吸収して、自らのエネルギーとして蓄えていく人がいる。
さいたま国際マラソンで2時間56分54秒を記録し、60~64歳のマスターズ世界記録を更新したマラソンランナー、61歳の弓削田眞理子さんは、紛れもなくそうしたアスリートの1人だ。
新型コロナウイルスのニュースで世の中の不安が高まり始めた2月下旬、「ランニング×科学」をテーマにしたNumber Doの取材場所に、弓削田さんはおおらかな笑顔とともにやってきた。
上下揃いの赤と紺のジャージには、胸元だけでなく、すねのあたりにも「石川眼科」の目立つロゴが入っている。その理由を尋ねてみると、駅伝仲間の眼科院長が制作してくれたのだと教えてくれた。
「院長先生が着ていて、そのジャージいいですねって言ったらくださったの。これ高いんだよって言いながらね(笑)。だから表彰台に上がるときや、今日みたいな取材のときは必ず着るようにしているんです」
40年近く高校で保健体育の教員を務めてきたとあって、シャキシャキと歯切れのいいトークが印象的だ。会話からはお茶目でピュアな一面も見え隠れする。
中学で陸上をはじめ、インターハイも。
中学から中距離競技に取り組み、川越女子高では800mでインターハイに出場、埼玉大では全日本インカレの1500mで5位、日本選手権でも6位に入賞した。のちにマラソンで1988年のソウル五輪に出場する浅井えり子選手にも、トラックでは負けたことがなかったという。
弓削田さんも24歳からフルマラソンを始めるが、同世代が軒並みサブスリーを記録するなかで、どうしても3時間を切れなかった。この20代での「不完全燃焼」が、弓削田さんのその後のランニング人生を決めていく。