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筒香嘉智、MLB1年目に迷いはない。
「バット1本だけ持って勝負しに」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHirofumi Kamaya
posted2020/03/22 11:40
1月12日、筒香嘉智は中学時代に所属した堺ビッグボーイズで、選手たちと楽しそうに野球の練習に興じた。
不安っていうのは結果が解決する。
――ようやく夢だったメジャーへの道が開けました。ワクワクしていますか?
「渡米する準備で自主トレをして、野球やっている間はワクワクしていますけど、夜になると不安になるんです(笑)」
――あれだけ待ち望んで準備をしてきたメジャーへの道が開けた訳ですけど、それでも不安はある?
「野球選手は不安でないときなんてないと思います。不安が消えるときって、試合でいい数字、結果を残したときぐらいです。そこから5分で反省に入る選手もいるし、そのまま翌日の朝まで嬉しく思っている選手もいる。でも次の日の朝がきたら確実に、今日はどうなるんだろうと不安になるものです。
不安っていうのは結果がすべて解決するもので、不安がなくなるということはない。僕はまだメジャーで1秒もプレーしていない。だから何も結果がない状態なので、不安が大きくなるときもあるし、ワクワクしてエネルギーが勝っているときもある。それは日によって変化していますね」
ひとつひとつの発言が軽くなかった。
――入団交渉で渡米して、現地ではショーケース(見本市)で練習を公開しましたが、どんな雰囲気の中で行われたのですか?
「ロサンゼルス郊外の(ノーラン・)アレナド(内野手、コロラド・ロッキーズ)の使っている練習場を借りて午前と午後に2球団を相手にやりました。レイズはエリック・ニアンダーGMにケビン・キャッシュ監督や打撃コーチ、守備コーチにトレーニングコーチなども来てくれて、人数的にも一番、多かった。その前でバッティングとフィールディングをやりました」
――いわゆる入団テストみたいな感じ?
「そうですね。僕の野球人生ではなかった経験で『これで決まるかもしれない』って思うと、ちょっとナーバスにはなりました。ただ、その反面、自分でも不思議なくらいに冷静で、緊張するとか、ちょっと鼓動が早くなるとか、足が重たくなるとか、そういうのはまったくなかったですね。なんでやろ……自分でも理由は分からないんですけど、それはなかったですね」
――そのとき視察に来たもう1球団も獲得に積極的で、条件面ではそちらが上回っていたという現地報道もあります。それでもレイズを選んだ理由は?
「一番はGM、監督、周りのスタッフの方と2、3回会って、話したときの熱ですね。ただ熱く話すだけじゃなくて、ひとつひとつの発言が軽くなかった。例えば僕を欲しいと言ってくれる理由で『サード、ファースト、色んなところを回ってくれる選手が欲しい。ケガの多い選手もいるし、投手の左右で代わる選手もいるから、そこをカバーしてあげて欲しい』と。チーム状況とか含めて、なぜ必要なのかということをきちっと説明してくれたことが大きかったです」