酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
今、1試合平均観客はNPB>大リーグ。
川崎球場の“29人”から隔世の感。
posted2020/03/12 10:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Naoya Sanuki
大相撲の「無観客場所」が淡々と進んでいる。これを見ているとプロ野球よりもさらに異様さを感じる。お客は入らないが、観客席はそのまま組まれているので、谷底みたいな場所で、裸の大男たちがこっそりと「秘密の神事」をやっているような感じがした。
プロ野球も相撲も「観客がいてこそ」のものだということを痛感する。新型コロナウイルスの問題は、そうそう簡単に解決しそうにない。我々が「満員の観客席」を見るのはもう少し先になりそうだ。
そこで今回は「観客動員」について考えよう。
ギネスブックによれば、スポーツイベントの最多観客動員記録は、1950年7月16日のブラジル、リオ・デ・ジャネイロのエスタジオ・ド・マラカナンで行われたサッカーのワールドカップ決勝戦、ブラジル対ウルグアイの19万9854人だという。
本命視されたブラジルが1-2でウルグアイに負けたため、会場では2人の自殺者が出る騒ぎになり、サッカー史では「マラカナンの悲劇」と呼ばれている。
これはそれだけ多くの人を収容できるスタジアムがあったということだ。エスタジオ・ド・マラカナンではコンサートの最多観客動員記録も作られている。
NPBは世界一お客を集めるプロ野球。
昨年、NPBは2653万6962人を動員した。これはNPB記録だ。試合数は858試合だから1試合平均では3万929人になる。NPBの平均観客動員が3万人を超えたのは史上初だ。
ちなみにMLBは、昨年6849万4895人を動員(試合数は2429試合)。1試合平均では2万8199人である。
MLBは1998年にエクスパンション(球団拡張)をして30球団になってから、観客動員が一気に7000万人台に増え、2007年には7950万3680人、1試合平均3万2704人を記録した。しかし2013年から観客動員が減り始めており、MLBは危機感を持っている。
実はNPBはMLBを抜いて、1試合平均動員数では「世界一お客を集めるプロ野球」になっているのだ。